白衣の天使-9
椎名は難しい顔でカルテを見ていた。顎に手をあて、百人近い女性患者たちのプロフィールを吟味する。学生から主婦、年齢は十代から四十代までの妊娠出産に適した世代で、健康な卵子を有する女性ばかりである。
カルテには患者の顔写真も添付されていて、なかなかの美形揃いだ。そのほうが内診にも身が入るし、女性器の内部をいじくりまわされて身悶えする彼女たちの反応を見る側からすれば、これ以上の処方箋はないと思える。
さて、今日はどんな器具を使って責めてやろうか、椎名は栄養ドリンクを片手に医師らしからぬ思考をめぐらせる。
やはり新山夕姫を雇ったのは正解だった。彼女の処方する媚薬さえあれば、どんな患者の心も思いのままに操ることができるし、失神寸前までオルガスムスを与えることもできる。性欲が満たされる上に金儲けもできるなんて、まさに一石二鳥である。
診察室のドアがノックされた。どうやら次の患者が来たようだ。「どうぞ」と椎名が返事をすると、赤ら顔の若い女性が入ってきた。緊張しているのか、あるいは事前に飲んだ媚薬が効いているのかは不明だが、椎名と目を合わさないまま彼女は椅子に座った。
「こんにちは」
人見知りな女の子に話しかけるように椎名は言った。
「あの、よろしくお願いします……」
女性の声はかすれていた。彼女を診るのは二度目なので、一通りのデータは揃っている。子持ちの主婦で、年齢は二十五歳、親の営む美容室で働いている可愛らしい顔立ちの女性だ。
体の具合いはどうかと椎名はたずねた。二人目の子どもが欲しくて夫婦で頑張ってはいるけれど、なかなか妊娠できないという悩みを抱えた患者だった。ようするに彼女は不妊治療を望んでいるのだ。
「先生にいただいたお薬のおかげで、以前よりも体調が良くなったみたいです……」
相変わらずもじもじしているが、女性に怪しんでいる様子は見られなかった。媚薬であることを伏せて処方した薬を、きちんと飲んでいる証拠だと思った。
「そうですか、それは良かった。不妊治療は長期戦になりますが、僕に任せていただければ何の問題もありません」
治療方法については初診の際に説明してある。苦痛を伴うこともあるが、その苦痛を乗り越えた先に悦びが待っている、だから一緒に頑張りましょうと椎名は女性の手を握った。
「では、下着を脱いでください」
椎名の指示に、女性は敏感に反応した。従うべきだとはわかっていても、男性医師の前で下着を脱ぐのは恥ずかしいに違いない。女性は涙目になっていた。
「どうしました?」
椎名が優しく声をかけると、女性の口がおもむろに開いた。
「ここで脱ぐんですよね?」
「そうなりますね。下着を穿いたままでは治療ができませんから」
「わかりました……」
思い詰めた表情でうなずいた女性はスカートの中に両手を入れ、はにかみながらゆっくりと下着を下ろしていった。その脱ぎたてのショーツを隠そうとする女性に椎名は言った。
「ちょっと下着を見せてください」
付着物を確認するためだった。もちろん女性は渋ったが、医師の言うことならばとあきらめてショーツを差し出した。
「素晴らしい。まさかこれほどの量が分泌されているとは」
ショーツは彼女の愛液でぐっしょりと濡れていて、いやらしい匂いを放っていた。これならいつでも治療を始められる。
発情のサインが確認できたところで、椎名は内診台を女性に勧めた。膣内や子宮口を診察するには、この台の上で両脚を開いてもらわねばならないのだが、カーテンで仕切られるため診察の様子は患者からは見えない。
どんなに用心深い患者でも、医師の前ではスカートの奥の性器をさらしてくれる。椎名の思った通り、その部分はジェル状の粘液で濡れそぼっていた。
「まずは触診をします。大丈夫、痛くないですから」
「はい……」
カーテン越しに女性患者の熱い息遣いが聞こえる。大陰唇の内側にある小陰唇がうごめき、患者自身が呼吸をするたびにそこから蜜が溢れ出してくる。入り口付近の肉は充血し、ピンク色に染まっていた。
椎名は女性の股間に顔を近付け、尖らせた舌先でそっとクリトリスに触れた。女性は内診台の上でぴくりと跳ね、なまめかしい鼻声で「あん」と喘いだ。
椎名の舌が性器を舐めるたびに、女性の体は従順に反応してみせた。乳脂肪分を発酵させたような塩気が味覚を鈍くさせ、ねっとりとした甘みすら感じる。
ラビアを剥き、膣口を吸い、クリトリスを触診していく。身動きの取れない女性はそれらの刺激だけであっけなく絶頂を迎え、休む間もなく今度は膣内を椎名に掻き回される。