晒し台歓迎会と悪魔のような少女-3
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そのころ、カプリコン一号機。パトリシアとセラは、今日は二人で頭部コックピット(胸の上部)に座っている。緊急の戦闘時には、後部の補助座席のセラが腹部まで滑り落ちる。
二人のシートのお尻の下には、袋に入れた生肉が敷かれている。
それは遙かな古代時代のヨーロッパに「蛮族中の蛮族」と呼ばれたフン族が、肉を熟成させた方法でもある。セラが調べたとことでは、馬に乗っている時間が長いために、股下の間に挟んでおくのだとか。蛮族ゆえ、熟成した肉をそのまま生で食べていたそうだから、ちょっとしたお弁当でもあったかもしれない。
何しろセラは父親が盗賊ゲリラの誰かであるため(母親が一時に拉致されていた)、彼女なりの折り合いのつけ方として、遺伝的を調べたのだそうだ。そうしたらマジャール人(東欧民族の一派でアジア系とも関係がある?)だとわかったらしく、直接の父親(ゲリラの鬼畜)のことは激しく憎悪していても、血筋としての先祖については肯定的に受け入れることにしたとか。
ちなみに、熟成した肉はプレミア付きで高く売れたりするため、貴重な副収入の資金源にもなっているらしい。流石に(敵ゲリラなどの)人肉の場合は人様に売れないので、「追っかけワンコ親衛隊」の餌にします(野犬の飼い犬化が進行中)。
「あ、そうだ! こんなの、配信してた。私がとっ捕まえた馬鹿女も出てる」
セラがタブレットで、パトリシアに映像を回す。変な顔で眉根を寄せつつ、変に楽しそうな様子である。
話に聞いていた人質交換で引き渡された女たちの、強姦・虐待の動画だった。ゲリラ側がブラック・ジョークのサービスか威嚇目的で周辺地域などに、衛星中継で配信しているのだとか(プロパガンダなどを流している海賊放送チャンネルなので、客寄せか?)。
二十数秒間ほど見ていたら、パトリシアは過去の記憶がフラッシュバックしてきて気分が悪くなり、キャノピーを開けて嘔吐してしまう。セラはパトリシアの過去の経緯を思い出し、バツの悪い顔で背中をさすってやる。
「まだダメっぽい?」
「ちょっと内容がキツかった」
たしかに非人間的ではあった。女どころか人間であることすら辞めさせるような地獄絵。多分に自業自得とはいえ、もはや人によっては死んだ方が良いと思うかもしれない。
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ちなみにスー・ザコバッバは無事に生還したらしい。
あの撃たれた少年兵士も小口径の銃であったために一命を取り留め、「もう役に立たない」という理由で、スーと共に州軍閥のテリトリーに「廃棄」されたとか。
冒険譚は、友人の「太陽を恨み呪われた吸血姫」デスメタル歌手(全世界から虚言と犯罪で恨まれ袋叩きされた、東アジア系某半島民族の血を引いている?のをウリのネタにしている)を通じて拡散した。彼らのファン・知人でライバル関係でもあるらしいセラを通じてパトリシアも顛末を知り、つい安堵のあまりに泣いてしまったそうだ。
あいにく少年兵士は、要塞都市の町中で爆発したが。
銃創の手当てのついでに、爆弾を埋め込まれていた。
セラはそのことを知った日、ほとんど会話すら忘れた顔で黙り込んでいた。一日遅れて事件の詳細を知ったパトリシアは「ひどい」とだけ呟いて理解不能らしかった。