Perfume-22
「今日色々街の中を歩いていた時に薔薇を育てている人がいてね。分けてくれたのよ。綺麗でしょう?」
セリスの言葉に周りの、特に若い侍女達は感嘆の溜め息をつきながら、目の前の薔薇をしげしげと眺めている。
「薔薇を育てるのがご趣味の王妃様が選ばれただけはありますね」
「凄く綺麗、香りも甘くて・・・・それでいて、くどくなくて」
(・・・・・・・)
ここで傍らの侍従から促され、持っていた花束を侍女に手渡してから部屋に戻るまでの間、セリスは今日1日の間に自分が経験した出来事を思い起こしていた。
もし運良く“逢瀬”のタイミングが重なればとアウザーの元を訪れてから、彼の不在からそのまま薔薇園の方に足を運ぶことになり、
そこでセリスから見ても素晴らしい“薔薇“を目にするだけでなく、
薔薇のイメージとは真逆の荒々しさと共にセリス自身が“翻弄”された。
当初感じた理不尽さが最後はセリス自身の“薔薇”を開発し、彼女の中の“疼き”を沈めてくれることになろうとは。
それもセリスが今まで身体を重ねてきた男達とは“違うやり方”で。
(アウザーもいいけど・・・・もし彼がいなくても、あの薔薇園があれば)
結局セリスは自分自身の身分を最後まで相手に明かさなかったが、
あの管理人ならばセリスの身分に斟酌することなく、今回のように手の込んだことをしなくても、次からはセリスの魅力を引き出す別の手法で彼女を“摘み取って”しまうに違いない。
(薔薇を手入れする“腕前”・・・本当に役に立つわ・・・・)
頭の中の夢想と共に、知らず知らず瞳が潤み、うっとりとした風情を見せるセリス。
まるでセリスが薔薇園で見かけた、管理人の小屋を立ち去る未亡人と同じように――――――――――――――
―――― 終 ―――――