カルトゲリラ、狂気の論理とイデオロギー(第一章・完)-1
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あの、パトリシアの因縁のある地の小要塞・駐屯地村には、ウォーカーの修理や整備ドックがある。これも元は山賊ゲリラどもが使っていた設備だった。
ドック入りしたカプリコンの腹部コックピットで、セラが殺意をみなぎらせながらキータイプして、パラメータを再調整している。
ラジオからは、カルト・ゲリラの海賊放送が狂った教説を垂れ流していて、それを聞いていると怒りと憎悪で気が狂いそうな暗い活力が出てくる。「こんな連中と戦うのだ」と思えば、頭も身体もフル稼働するしかない。
カルト・ゲリラ(山賊や盗賊のような反社会的軍閥や組織犯罪集団のネットワーク)には、教父・預言者だの使徒だの尊師だのと言われる(過ぎた詐称・自称ではあるが)政治的・思想的指導者が何人もいる(いた)。
今日は「ハード割礼派」の正統尊師がベラベラ愚昧を喋っている。曰く、超古代アフリカの「正統割礼」は神との契約であり、ユダヤ教のように男の包皮や女のクリトリスを切り取るだけでは足りない甘えであり契約違反である。女は陰核だけでなく陰唇の一部までを切って縫い合わせて、結婚まで完全な処女性を守るべきであって、そうでない女は本質的に淫乱痴女や売春婦と同じだから輪姦レイプされて当然の自己責任なのだそうだ。
いつぞや聞いた「キュベレ派」の教義では(キュベレは古代中東の邪神)、男は(母親の恥部から生まれるゆえに)「先天的マザーファッカーの原罪」を背負っているから、贖うために去勢しなくてはいけない。天命の懲罰を免れるのは真理に目覚めた男性だけであり、そうである自分たちだけが子孫を残すことが許される。それ以外の「罪深い輩」の男は去勢して宦官奴隷として使役するべきだし、女はレイプしてでも「正しい種子」で妊娠させることが慈悲であり救済であり恩恵であるそうな。
他にも「ノアの真実の方舟」派は自分たちだけが正しい大洪水以前の人類の生き残りであって、残りは猿と泥人形であり、「地に殖えよ」という神の命令実行するためにレイプ強姦は宗教的な努力義務であると説く。「エデン回帰」派は、超古代の有史以前の人類の本質にもどるために猿のような乱婚社会が正しいとし、乱交・レイプは祭儀であって(拒否する女は拉致監禁して)強要して「啓蒙」するべきだと。一事が万事にそんな具合で、そんな宗派や学派が数百もあるらしい。
昔の途上国の反政府ゲリラが「敵部族へのレイプは合理的なやり方で栄光」と自己正当化したり、民族浄化を狙って組織的に虐殺と婦女暴行を奨励したのと同じ発想。わかりやすい一例ではヨーロッパも古代末期に蛮族ゲルマン人に席巻されて、幸いにもローマ文明圏の古代文化による偉光とキリスト教の教育・説得のお陰で融和・混血の軟着陸で済んだだけである。最悪の事例としてコリア半島は古代末期から中近世までの間にシベリアのエヴェンギ族によって殺戮とレイプで民族浄化されており(中国大陸本体も地続きゆえ、匈奴やモンゴルなどの北方民族に大規模流入・浸透・征服されて大幅な混血で古代時代とは大きく変容している)、民族そのものが変成して古代朝鮮人とはほぼ別物である(島国でタスマニア島のような独自民族の日本人とはほとんど赤の他人ということ)。さらにはコリア半島では儒教イデオロギーそのものが調停や融和ではなく、征服・侵略・暴行する側の自己正当化の詭弁に悪用されたから、朝鮮儒教が「異常」なのは当たり前だろう(体裁と形式のみ借用して、根幹の善意・英知や長所はことごとく捨象された)。だから彼らコリアンの歴史や思想などの主義主張は主に政治的な欺瞞・策略と大差がなく、あまりもっともらしい表面だけ見て真に受けてはならず、むしろ隠れた真意・動機の悪意から考えなければ理解不能(基本的に詐欺や妄言の類だと思って冷淡に対処すべき)。