(過去前編)盗賊ゲリラ村の虜囚パトリシア-3
4
あの少年兵士とコカ畑でヤッてしまった。
このゲリラ村では夜のノルマ以外でもそういうことはあったのだが(作業に支障が出ない範囲でなら黙認されている)、パトリシアは自分から、しかもかなり乗り気で応じてしまうとは思わなかった。
花束だけ渡し、名残惜しそうな少年を呼び止め、衝動的にキスしたのはパトリシアの方だった。どうしてそんなことをしたかといえば、空虚感を埋めるちゃんとした「自分だけのお気に入りの男」が欲しく、手頃な相手がいなかったからだろうか。
「手早く、ね」
ウインクして、自分からお尻を差し出して、スカートをめくった。
抗えるはずのない思春期の少年に立ったまま貫かれながら、パトリシアは初めて性的な充実感を得たようだった。強烈なエクスタシーの極限にまで達しなかったとしても、精神的に満たされるのはまた別の問題だから。
愛の実感や具体的な庇護や好意の表現は、単純に身体の性的快感とは別次元。むしろ一番欲しい「魂のための主食」みたいな。しかも両方が満たされれば格別。
「すごい、中から熱いのが溢れてくる!」
「ふぇ?」
交接する彼の感動的な声で、自分が我知らず濡れてしまって、壊れた蛇口みたいに本気の愛蜜を溢れさせていたことを悟る。
ピストン運動で攪拌されただけで、甘い悲鳴がほとばしりそうになる。片手で口を押さえて我慢していたところを、背後から鋭敏な姫小豆に悪戯されて膝がくずおれそうになる。背筋を冷たく汗ばませて小さな絶頂がパチパチと爆ぜることに当惑してしまう。
だから、少年が事後にキスして「一緒にここから逃げよう」と小言で切り出したときに、つい頷いてしまった。考え方が甘かっただろうか。
悲劇を招くとも知らず、ロマンチックな気分と楽天的な希望のために目が眩んでいたとしか思えない。
しかも、余計な情け心で墓穴を掘った。
悔やんでも悔やみきれない結末。
5
裏切り者は、相部屋の友人のミレーユだった。
パトリシアが「どうせなら」と色気を出して、ついでに一緒に連れて逃げようと、それとなく誘ったのだ。逃げたくないわけがないという思い込み。
流石にあの少年のことは伏せておいたのだけれど、そこはミレーユは女の勘で裏を察したものらしい。密告された少年は即座に見せしめに吊された。パトリシアは異変に気づいて駆けつけ、土下座して泣きすがって可愛い少年兵士の助命を嘆願したけれど、無駄だった。
懲らしめに、荒々しく集団輪姦されるパトリシアの目の前で「小さな恋人君」はリンチの暴力にあい、最後には絞首縄で吊し殺された。地面で手足を押さえられ、泣き叫びながら無理矢理に連続挿入されていたパトリシアは、殴られてアザになった顔で、さらに引っぱたかれながら絶望の叫び声が止まらなかった。
「どうして裏切ったのさ。私とあの子を売るなんて」
「だって、だってさ! あんな子供みたいな子と脱走なんて絶対に失敗して、きっと殺されちゃうよ。あの子は可哀想だけど、パトラまでいなくなったら、私だって一人ぼっちになっちゃうもの! もう私の村もないし、帰るところないし、誰もいないんだもの!」
涙声で詫びるミレーユに、衝動的に平手打ちせずにいられなかった。それでも怒りが収まらず、蹴ろうとすると、ミレーユは慌てて下腹を手で庇った。
「お腹はダメっ!」
「あなた?」
それでパトリシアも事情を理解した。
ミレーユは妊娠しているのだ。
「「パパたち」が「育てていいよ」って言ってくれたの」
泣き崩れるミレーユの事情は、あの男たちに種づけられた子供を守るためだった。生まれた赤ん坊はしばしば売り飛ばされる。彼女にはもう帰る場所もなく、襲撃で拉致されたときに家族や隣人も皆殺しにされている。このゲリラ村で母子が無事に生き延びるためには、適応して「パパたち」を怒らせてはいけない。
こんな哀れな相部屋の娘が「愛情の幻想」や「小さな幸せ」にしがみついたとしても、これ以上に責める気にはなれなかった。