春のうららの闇-1
夏休みが近づいてきた、ある休日の巳(み)の刻。
僕は仲良しのるぬの部屋のベッドで、裸になったるぬの乳首を吸っていた。
「ユイくん……可愛い赤ちゃんのユイくん…… ママのおっぱい美味しいでちゅかー?」
僕は乳首に唇を当てたままうなずいた。
「ユイくんは、ママの宝物でちゅよ……」そう言うとるぬは、手をのばして僕のポコチンをつまんだ。
「エラいわね……コチコチに硬くなってまちゅねー」
るぬはもう一方の手で僕の頭をいっそう強くおっぱいに押しつけながら、僕の髪をなでた。
「ユイくんのここ、あとでママが吸ってあげまちゅからね…… ママはユイくんとエッチなことするの、だいちゅきですよー。」
僕は、るぬの汗ばんだ肌の匂いに包まれながら、あの春の日の出来事を思い出していた。
▽
桜がすっかり緑の葉になったある日曜日、僕はるぬに誘われて近くの緑地公園に行った。
「さすがに、」るぬが言った。「桜の花の時期が過ぎたら、その反動で日曜日なのに誰もおらへんね。」
「うん……結局僕ら、お花見は別の所へ行ったもんなぁー」
僕たちはそんな話しながら、遊具にもなってる大きな日時計のある広場にやってきた。
「ここの日時計の文字盤、面白いね。」
るぬがポーチからインスタントカメラを出して、一枚撮影した。
「うん、十二支で書いてあるもんなぁ。」
「今は、巳の刻やね。そやけど……」るぬは文字盤の漢字を指さした。
「なんか、十二支で言われたらずっと夜みたいやね。『卯(う)の刻』って朝の感じせえへんし、『未(ひつじ)の刻』に昼間の感じせえへんし……」
日時計を離れて僕たちは、欧州風庭園のほうへ歩いて行った。
途中、両側を植え込みに挟まれた細い道があった。
歩きはじめてすぐ、僕は向こうから道いっぱい横に並んでやってくる、三人の女のひとに気づいた。
(ヤバいっ!)三人は「ちょっと名前の知れた」k校の制服を着て、タバコの煙を吐きながら歩いていたんだ。
僕は黙って、るぬの手を持って方向転換した。ところが向こうからは獣の皮の模様に身を包む、金やピンクの髪の女性三人が横に並んでやってくるんだ。
(強行突破だ!)
僕は、るぬの手を引いてその三人めがけて駆け出した。
その瞬間、僕は後ろから目をおおわれた。両足が宙に浮いた。そして矢のような速度で、どこかに運ばれていくのを感じていた……。