春のうららの闇-4
女たちはしきりと僕のお尻を撫でて囃したてた。
「出してまえよ。女の子の中に出すのがオトコの本懐やぞ!」
「その子チャンも、大好きな彼氏クンに出してもろたら(もらったら)本望やぞ!」
「中出しは気持ちええぞー!」
僕は言った。
「イヤや!(るぬチャンを)妊娠させたくない……」
名前をあやうく言ってしまうところだった。しかし女たちは笑いながら囃しつづけた。
「女は孕んで一段と強くなるんやで。」
「そうや、お前が考えとるほど女は弱ないで。」
「その子チャンが赤ちゃんウもうがオロそうが、お前は痛くもかゆくもないんやで。」
僕は首を振って「それはイヤ、それがイヤ!」と叫んだ。
その首を押さえる手があった。それはリーダーの女の手だった。
「おぅおぅ、それでその子チャンにええとこ見せとるつもりかいや。」
リーダーの女は手にしていたタバコを口にして大きく吸い込むと、僕の唇にキスをした。
キスすると同時に、唇の中にタバコの煙を勢いよく吹きこんできた。
苦い煙が、僕の目の前を真っ暗にした……。
▽
「……おクン、ユイ雄くん。」
僕は、るぬの声に気がついて起きあがった。
僕の下半身は裸だった。
(あれは悪い夢ではなかったんだな……)るぬも服が乱れていた。
「あのひとたちは?」僕が聞くと、るぬは
「スマホに何かメッセージが入ってきて、あわててみんなどこかへ行ってもたわ……」と答えた。
太陽が高く、僕たちを照らしている。
あたりには鳥の声しか聞こえない。
僕は情けなさがこみ上げてきて、やっとこれだけ言った。
「僕、るぬチャンを……守れへんかった……」
るぬは僕がまだポコチンむき出しなのもかまわず、抱きついてきた。
「ユイ雄くんは、私を守りとおしてくれたよ…… 私たち、何にも奪われてへんよ。」
▽
るぬチャンは、それから間もなく生理がきた。
それに心がゆるんで僕と るぬチャンは、それから裸で身体を触りあう遊びをするようになった。
時には、親が隠してるコンドームをかすめ取って、ポコチンを洞に突っ込む本格的な性行為に及んだりして……。
きょうは、そんな用意がないから「ママと赤ちゃんごっこ」を楽しんでいた。
「あ、そうや。」るぬがベッドから起きあがった。
「ユイくん、ママちょっとお飲み物持ってくるから、おとなしく待っとるのよ。」
裸のままで部屋から出てゆく、るぬの後ろ姿は いやらしかった。
僕は赤ちゃん役をしばし忘れてベッドの上に起きあがった。
すると、サイドテーブルの上に積まれた本に混じって、一枚の黒いカードがあるのを見つけた。