お日さまが沈むまでに-3
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二人が雑居ビルを出ると、太陽はすっかり西に向かい、遠くのタワーマンションの上層階の窓からオレンジ色の光がはね返っていた。
「ごめんなさい、ママ。」しょう太が言った。「すっかり時間忘れてしまってた。」
「いやー、」あき音が笑った。「私もうっかりしてたわ。日没ずいぶん早くなってるからねぇ。あのまま私が離れてたら、しょう太を強姦犯にするところだったわ。」
あき音のその笑顔が、ふと消えた。
「ねぇ、しょう太。」
「なあに?」
「さっき言ったこと、あれ、本音なの?」
「あ……」しょう太はさっき、あき音に向かって「売女の娘」だの、「何人のオトコをたぶらかしてきたんだ」などと汚い言葉をぶつけたことを思い出した。
「そんなワケないよ。あのピアスやタトゥーで侵されたカラダ見たら、つい言葉で罵りたくなってしまったんだ。」
「なるほど。」あき音に笑顔が戻った。「それ聞いて安心した。」
タワーマンションの下部がだんだん薄黒くなってきた。
「じゃ、」あき音はしょう太の唇にキスをした。「ここで別れましょう。今度また、いいコ見つけたら楽しもうね!」
そう言って後ろを向いて歩き出したあき音は、急に足どりが乱れてビルの壁に手をついた。
「だいじょうぶ?」かけ寄ってあき音を支えたしょう太に、「だいじょうぶよ……」とこたえたあき音は、股間を押さえた。
「それにしても、何度やってもロストバージンの痛みって、慣れがこないわねぇ……」
【おしまい】