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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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麗しき牝獣の本領(最終話)-6

6
 お隣さんのパンパンをご本人のサーシャとグルになって盗み見ていたら、眼鏡車掌の途野磨乃が料理のお裾分けにやって来た。

「あい、アヤちゃんの分」

「あ、ありがとうございます」

 それはベーコンとポテトのドイツ風の家庭料理。
 磨乃はジャガイモ料理が得意なようで、「亭主の餌やりは婦女子の嗜み」だそうな。彼女にとって今のメトロ暮らしは、かつての大学時代の先輩でもある鵺と「夫婦営業の旅館でもやっている女将みたいなもの」だとか。
 アヤは姿形(とメンタリティまでも?)が永遠に高校生年代なのだけれども、磨乃の場合は大学二・三年生くらいで失踪し、およそ二十歳くらいで外見年齢が止まっている。
 横合いから、監視カメラからのパソコン映像を覗き込む磨乃。

「聞いてたけど、ハッスルしてる。海月君も頑張ってるわー」

「ええ」

 ちょっと気まずく恥ずかしげなアヤ。映像を見ていた張本人のくせに赤くなっている。
 磨乃は平気な様子でニヤニヤ笑う。

「リアルタイム? だったらあいつらには、二人分届けてやらなくっちゃね」

 どうやら突撃するつもりらしい。
 何しろこのアヤの私室の、すぐお隣なのだ。
 アヤとしては、止めるべきかどうなのか、困惑顔である。
 しかも磨乃はこんなタイミングで、アヤの思考をフリーズさせる電磁波パルス攻撃じみた爆弾を取り出す。それは一枚の写真だった。

「そうだ。はい、これ」

「? 玲君! ううぅぅ〜」

 その小さな子供の写真を見て、アヤの目が突如としてキラキラ輝く。
 どうせ盗み撮りした最新の監視資料の一部か何かなのだろうが、玲君は別のパラレル世界のアヤと、元の世界のリクの子供である。生まれた原因がメトロ世界のミラクルに関わっていることもあって、やや特別な存在でもあった。
 もちろんアヤにとっても究極の慰安材料で、本事案への関与は格別な役得でもある。

「これって七五三ですよね! もう五歳かー、うーんー」

 ほんわかとしたニマニマ笑いが止まらない、幸福感全開のアヤ。
 かつてメトロの世界に迷い込んだ玲(三歳くらいのとき)をアヤが保護して元の世界に返してあげたときは、キスしまくって擦り切れるほどに頬擦りしてしまった。しかも試しにおっぱいを吸わせてみたら、精神の極度の興奮で母性愛ホルモン分泌が急上昇で爆発したようで、まだ処女のはずなのになんと母乳が出た。幻の我が子に授乳できた喜びで、その晩に思い出しただけで嬉しくって泣いてしまった。
 この前にメトロ空間の時空の揺らぎを利用して、成長後の玲と会って、近頃のお客様(莉亜)の薬のことで相談したこともある。彼は「叔母さんじゃなくってパラレルの母さんか」などと、幼少時の謎の記憶と思い出を納得していたものだった。
 いずれ彼、玲が結婚するときには、また叔母か従姉妹だとでも素性を偽って、いつでも乱入して祝福してやるつもりでいる(母乳まで吸わせたのだから当然の権利だ!)。きっと、あのパラレル世界の自分(アヤ)は気づいても調子を合わせてくれることだろう。だがその前に、愛兄リクとサエのハネムーンをメトロに拉致して3Pで祝う必要がある。
 そうこうするうちに、パソコンの隣室映像で事変が勃発していた。
 ちょうどベッドで交わっていたサリーナと海月のところに、二人分のポテト料理をお盆に載せた磨乃が押し入り乱入している。

「はい、お腹の足しに」

 ヘッドフォンから聞こえてくる盗聴音声の、磨乃の声は普段の調子である。
 そしてポンポンと交接中の海月の尻を撫で叩き、ニヤニヤ笑って親指を立てる磨乃。
 目を白黒させるサリーナと海月を放って置いて、それ以上は邪魔せず、すいーっと部屋を出て行ってしまう。外貌は二十歳くらいの小娘でも、まるで妖怪ぬらりひょんのような落ち着いた態度と堂々たる風格で、流石は鵺の内縁の妻なだけはあるだろうか。
 突然の襲来に遭ったカップルの二人は狼狽するばかりだった。

「え? あれ? 海月、イッちゃったの? さっき磨乃にお尻撫でられて弾みでって、情けないわねっ! ほら、やり直しよ!
 は? 休憩? そんなわけないでしょ? 磨乃ちゃんのお夜食、食べる前にまず一回、食べた後でもう一回よ。男の子らしくシャキッと勃ちなさいって」

 迫るサリーナはお腹を鳴らしたようだが、お夜食前の前菜ウインナーのことが優先であるようだ。繰り広げられるのは「仁王立ちフェラ逆強制」の図。気をつけの姿勢で直立させた海月の下半身に、膝ついて牝犬のようにご執心である。

(お盛んだわー、平和だわー)

 アヤは横目でパソコンを見ながら、それでも目線は主に玲君の写真を眺めている。男女が励む理由と本能がわからなくもないし、万が一にも(それはメトロ空間では逆に奇跡なのだが)サリーナに海月の子供が出来たら、海月の遠い親族であるアヤにとっても血縁のある子ということになる。どう転んでもアヤには「ウマー(美味しい)」で丸特なのだから、サリーナによる淫行を止める理由は全くない。

(いっそのこと、孕んじゃえばいいのに。やれ、種馬海月! サーシャを妊娠させちゃえ)

 それからお腹が小さく鳴って、アヤは幸福な妄想楽園世界から我に返る。
 テーブルの上では磨乃のポテト料理が美味しそうな香りを漂わせていた。

(「海月とメンヘラ魔女車掌」完)


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