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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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海月の捕食された日-5

5
「優しくして。優しく虐めて」

 サリーナが発情したような、怯えたような、震える瞳で訳のわからないことを言い出す。海月は片眉を上げて意味不明展開を理解に努める。無理か?

「ハァハァ。海月くん、直接触るの初めてだよね」

 海月が自由に動き回って、触れ合えるようになったのは、ごく最近のことなのだ。それまではアクアリウムで半実体で漂いながら、データ処理の一環を担っていただけで、他の職員メンバーとは話は出来ても身体を振れ合う機会はなかった。
 ともあれサリーナは彼を彼と認識しているのだから、ちょっとは落ち着いてきたのかもしれない。そして興奮の事情が、だんだんに変わってきているのかもしれない。

「カリーナみたいに、してくれる」

 元コンビのカリーナとは百合関係で、この海月はアヤだけでなくカリーナの子孫でもある。だからサリーナからすれば心の何処かで同一視してしまうのだろう。アヤだってそれを見越してこの場に呼んだのだが、どうも当たりのようだった。

「エロイ事?」

「うん、エロイ事。お尻叩くだけでも、お願い」

「ハァ? 尻叩きって、子供かよ?」

 そのエロティックな意味のヤバさが理解できないことが、ガキなのである。
 アヤはわかったらしく、なんとも言えぬ表情で横から助け舟を出す。

「してあげたら? 要するに、叩かれたり懲らしめられてもそんなにメチャクチャ痛かったり怖い事はされませんって、サリーナさんはそういう実感が欲しいんじゃない?」
 あえて「サリーナは基本Sだけど甘口専門のマゾ女」(カリーナ談)などとは言わないのは、友人のことでもあるし、この親族の少年の前で格好の悪い卑語発言をバンバンするのがどこか憚られたからだろうか。それに「ソフトなSMを御所望なのです」と説明したところで、どうせこの気の利かないガキはわからないから、実際にやらせるしかなかった。
 海月は飲み込めないままにも、サリーナの腰を小脇に支える姿勢になって、量感のあるヒップをどこかの小太鼓のように構える。パンッと張った破れジーンズの尻の部分は、さっきの失禁で汚れているようだった。
 少し嫌そうな顔をする少年が目でアヤにアドバイスを求めると、アヤは可笑しげに微笑して「肩叩きとかだと思って、痛すぎないくらいで叩いてあげたら?」などと、少ししらばくれて言う。
 サリーナは喘ぐような擦れた声で告白する。

「優しく虐められると、安心するの。怖くなくなるから」

 やっぱりソフトSMがお好みらしい。
 元からの変態チックな性格もあるのかもしれないけれども、絶命時に異常な性的拷問を受けたこともあって、奇特なマゾになってしまったのかもしれない。ガチで痛めつけたり脅されるのはいやだが、プレイごっこで優しく虐められるとかえって安心できるそうな。
 海月は手を上げて、パンと叩く。
 サリーナの体がビクンと震えて「あんっ」と甘い声が零れる。
 まだ涙目のまま、ヒップを叩かれる度に濡れた吐息と嬌声のような音色を漏らす。

「あ、あんっ。ハァハァ、うっ!」

 誰の目にも明らかに性的に感じてしまっているとしか思われない。
 少年はそのデニム布地越しの手触りの柔らかさに感動を覚えながらも、それでも減らず口を叩かずにいられない生意気な性分だった。

「サーシャって、変態女なわけ?」

「アンッ! 言わないで」

 サリーナは豊かな桃尻を揺らしくねらせる。
 止まる。静止する。深い安堵と満足のような息を吐く。
 それから急に拘束を振り解き、不意を突かれた海月を床に押し倒してキスをする。上からのしかかった女体の柔らかさと巨乳に圧倒されてしまう。
 わけがわからないファーストキスは甘く、それから微かな胃液の臭い。
 牝として発情したサリーナの目は魔物じみた輝きを放っていて、見つめているとそれだけで頭がおかしくなりそうだった。蕩けかけた女の表情が生々しい。
 海月はどうにか錯乱マゾ女を押しのけて上体を起こす。サリーナの方は目をトロンとさせながらに人心地ついたようではある。猫が甘えるみたいに海月少年の肩にもたれかかる。


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