海月の捕食された日-4
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(サリーナさんもたいがいゲンキンだなー)
アヤはちょっとばかり呆れて苦笑いする。
しばらくして、サリーナと抱き合う少年のズボンの股間が勃起しているのを見咎めて「海月って最低」と呟いた。そして「海月、ちゃんと優しくするのよ」とだけ厳命口調で指と釘を刺して、サリーナの私室から出て行く素振りを見せる。
海月の髪の中で、クリスマスツリーの電飾のような光が瞬く。混乱や興奮が生理的暴走で反応しだした下半身だけでなく、別の意味で上半身にも目に見えて現れていた。
「ちょっと待ってよ。アヤ姉、こんなのどうしろって」
「私がいたら、やり辛いでしょ?」
アヤは幾分か機嫌を損ねて拗ねた調子で、非難めいた眼差しを海月に投げる。口には出さないものの、サリーナに抱きつかれて勃起したズボンの股座に探るような目で顔を顰めている。近頃ではソフトになって理解するようになったとはいえ、それでも基本が「愛兄一筋」のアヤからすれば、男たちのしばしば即物的過ぎる性欲生理やセンスを十分わかっているわけではない。ましてそれが身内となればなお更でもある。
なお、アヤは類似の心理的葛藤が理由・動機で、リクの不貞に対してすら不満と嫉妬を溜め込んで、その現在の恋人(嫁?)のサエを「義姉への洗礼」とばかりにレズ行為で犯し、自身も相打ちでロストバージンするに及んでいる(サエ個人のことは義姉として好きなようだが、それでも兄を奪われたいささかの恨みはあるらしい)。
「男の子でしょ。察してあげてるのに感謝したら? サリーナさんはOKみたいだし、お世話になっとけば?」
冷やかし非難する口調のアヤ。髪の先を指でクルクル玩びつつ。
「なんでそーなるんだよ」
「ハァ? 自分で言い出したんでしょ? 海月も、やる気あるみたいだし」
アヤは「デキの悪い弟」に蔑む半眼で突き放すように答えて言う。自業自得だし本望だろ、とでも言いたげだった。彼女からすればこの未来の末裔で血縁者でもある親族の少年の貞操を友人のサリーナの性的な生贄に差し出しても、痛くも痒くもないらしい(ブラコン心理の対象になるのはリクだけのようだ)。
「やる気って」
海月からすれば、美女に抱きつかれて巨乳を股間に押しつけられていたのだから、そんなものはどうしようもない。
サリーナはまだ錯乱している様子で、喘ぐように顔を赤くしていて、普通のときのように細かいことを気にする余裕はないらしい。少年の腰に縋りついたままで、まだプルプルと悪寒のように震えている始末なのだった。