過去から彼女(最終話)-3
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シャワールームのドアを開け、導き入れられる。
サエは目配せして、玲に具合を訊ねた。
「どう? 我慢できなそう?」
玲が腰を引き攣らせて弱々しく頷くと、サエは便座カバーを持ち上げた。そのまま彼の背後に回りこみ、裸の胸乳をギュッと圧しつけながら両手で猛った牡の股間をまさぐってくる。くすぐる指は樹上のリスのようにクルクル這い回るのだった。
「そらそォら、出しちゃえ出しちゃえ♪」
サエは愉快痛快にノリノリで検分するようにいたぶってくる。苦悶する玉巾着まで揉み解しながら、本能で充血した生々しい固さを確かめるように撫で回してくるのだから、面白半分に果てさせようとしているのは明らかだった。
耳元でフッと吐息を吐きかけるようにしながら、サエはねっとりと囁く。
「玲、感じてイイんでしょ? 遠慮せずに白いオシッコ、ピュッピュしちゃえ」
漏らしてしまう。
耐えるなど、どだい無理だった。
「おー、濃いっ! ドロドロじゃん、溜め込んでたんだ?」
サエは鼻腔で臭いを吸い込みながら、痙攣しながら萎えかけた雄性器を弄っている。
しかも指先で尿道口を拭って、そのとごるような白濁の雫をペロリと舐める。
「ん、リクと変わんないね。親子で精子の味まで似てるのかしら? 他の男は知らないから、よくわかんないけどさ」
「そんなことまで、親父と比べる?」
「だって、気になるでしょ? 好きな男とアヤちゃんの息子なんだし」
サエはいっかな悪びれる様子もない。
けれども玲からしたら、それはそれでデリケートな問題なのだ。
(このサエは、別に僕個人に恋愛してどうとかいうんじゃないんだよな)
彼女からすれば玲は初対面で、単に恋人と義妹の未来の息子だから、父親のリクの代用品くらいで興味本位でこんなことをしているだけなのだ。しかし彼からすればサエはある意味では「永遠の思慕対象」であるだけに、そのことが無性に哀しくなってくる。
「何を黄昏てるのさ? ちょっとお漏らしさせられたくらいで」
「そんなんじゃないけどさ」
「ふーん、妬いちゃったわけ? そんな哀しそうな顔してさ」
困った奴め、とでも言いたげに鼻から吐息するサエ。
じゃじゃ馬娘はヒョイッと身軽な尻で便器の横のバスタブ縁に腰掛け、それから玲に見せつけるように両膝と腿を開いた。どうやら今度は玲の攻め番を許すつもりらしい。
「そんな拗ねないでよ、私のも見せてあげるから」
濃密に濡れ咲く女陰花を、今しがた精液をぶちまけた便器の横で跪いて拝観する玲に、サエは淫情で蒸した面差しに見下ろしている。
指で突くと、サーモンピンクの花弁から透明な姫蜜が蕩け出す。
「指入れていいよ。けど、痛くするのはナシで」
ゆっくりと人差指を差し込むと、やはり処女ではなかった。すんなりと姫洞が受け入れていくことが無性に哀しくなる。
けれどもウネウネと熱くうねるこの胎内にペニスを差し入れたなら、どれほどの悦楽に見舞われるのか、想像もつかない。しかも発達した筋肉が締めつけてきて、指で女の急所を犯しているというよりも、ふしだらな肉食花に指を食われそうに錯覚するほどだった。
目線を上げれば、サエは興奮した様子で頬を赤らめて見詰めていた。
「楽しい?」
「とっても」
「そう」
サエが目を伏せて呟きながら、初めての指を咥え込んだ温かな姫唇の壷を蠢かす。たぶん無意識の不随意的な、異物侵入への肉体反射なのだろう。彼女の内部では淫靡なヒダヒダのそよぎが豊かでまとわりついてくるようだった。
「ねえ」
彼女は急に媚びた響きの声音で呼びかけてきた。
「玲は、私のこと、好き?」
「うん」
素直に返事をすると、サエは優しげな満足な表情を浮かべる。
「ベッド、行こうか。もうシャワーなんか、あとでいいから」