キレる!-1
完全武装のような、フルフェイスヘルメット付きの、SFバトルスーツような宇宙服を着込んだその男、アイザック・アシモフが数週間ぶりに表に現れたのは、あの虚言報道のテレビ局のすぐ近くであった。
他にも銃火器で武装した男たちが百人近くも集まっている。
あえて私服風戦闘服のカーヴァー軍曹が怪訝そうにアイザックに訊ねた。
「マーカーやネクロモーフ以外に興味がないんじゃなかったのか? 今回の作戦は人間相手の戦闘、というか、ほとんど虐殺みたいなものだぞ? あいつらはたしかにユニトロジストの一味で「広い意味でのテロリストや幇助分子」だが」
アイザックは頭を左右に振った。諦めの表情で目が据わっている。そしていきなりカヴァー軍曹の襟元を掴み、血走った眼で怒気の篭る言葉を吐く。
「あいつらは人間じゃねえ、「人の形をしたネクロモーフ」だ! こんなことになってるのに、まだ口から糞垂れ流して平気な面してやがるのが証拠さ!」
作戦開始の合図と同時に、プラズマカッター(作業用?)を片手に、乱射しながら突撃していくアイザック。
その容赦のないやり口は鬼気迫る。これまでにもその武器(凶器)で、数え切れないほどのネクロモーフをバラバラに切り刻んで動かなくしてきたのだ。並の人間ではひとたまりもない。
手足を切り飛ばされ、内臓をぶちまけ、頭が千切れて飛び散る。「ネクロモーフの処刑人」に攻め込まれたテレビ局の内部は、その足取りの跡が血の海の凄惨な屠殺場となった(プロ軍人たちも真っ青だ)。「ネクロモーフは何処だ〜」などとブツブツ呟きながら、出会うもの全て殺戮。きっと日本の「なまはげ」の方が百倍も慈悲深いに決まっていた。
「いいね! カーヴァー君、こいつらちょっと一発二発撃ち込むだけで、簡単に動かなくなる。ネクロモーフの中でも最弱の雑魚どもだな!」
返り血塗れでゲラゲラ笑っているアイザックを横目に見て、カーヴァー軍曹は「コイツとだけは絶対に戦いたくないな〜」と心の中で思った(一度だけ方針の違いで喧嘩したのは命知らずだった)。
なにせ敵の基準がネクロモーフなので(バラバラにでもしないと駄目)、残虐な戦い方が基本なのだ。
その後、生首を持ったアイザックが「あなた方は人間ですか? それともネクロモーフのお仲間ですか?」なぞと問いかけに、母校の大学に遊びに行くのだが、それはまた別の話である。