大統領の決意-1
アメリカでも世界でも。そのころ大学では、ユニトロジーに傾倒する教授・教員・職員たちが少なくなかったし、マスコミや中央・地方の政治家なども「狂った逸材」ばかり選抜されて、あるいは買収されてズブズブの奴らが少なくなかった。
大統領は報告された「リスト」の山を改めて一瞥しながら言った。
「うむ。パレルモ条約でテロリストとして対処する。世界各国との情報共有も忘れるなよ」
「はっ!」
敬礼した部下(幹部)たちは背広と軍服。なんとエリーさんも後ろの方に混じっている。
大統領は思い出したようにエリーさんに訊ねた。
「それからアイザック君はまだ飲んだくれているのか?」
「ええ。「あんまり酷すぎる、もう嫌だ」などと言って」
「ふむ」
これまで何度もマーカーによる危機と対峙して来て、この最後の最後で人間の阿呆振りを見せつけられた。
「月」やマーカーと戦う前に、ユニトロジストのキチガイどもと内戦しなければいけないふざけた現実である。やりきれなかったらしい。おかげでもはや完全にやる気を失ったものらしかった(無気力状態のダメ人間に逆戻りだな!)。
カーヴァー君は軍に復帰して虐殺掃討作戦を敢行中。エリーは言葉を付け加えた。
「ですが、マーカーやネクロモーフと戦うのに、成り行き次第で連絡はしてもらって構わないとか何とか。ただ、「ユニトロジストのアホどもは犬にでも食わせとけ」だそうです」
「ふむ。「それでは動物虐待になってしまうので軍人に相手をさせる」と伝えてくれ」
それから、プロレスラーのようながたいのいい大統領は次の命令を発した。
「それでは手始めに、ユニトロジストの巣になっている「あの半島」に水爆三百七十発の浄化作戦を、十五分後には開始する!」
「フーア! あのゴミども、撃って燃やしちまえばせいせいするんです!」
狂犬と呼ばれた国防長官が顔を男前に輝かせて敬礼する。
およそ「月」と戦う前に、人間同士での度し難い戦いこそがまず熾烈なのであった。