シアトル-1
そのころシアトルでは、ユニトロジストたちが町を勝手に占領して意味不明な「自治区」を主張しており、警察を追放していた。
拡声器でサングラスの黒人が、外国鈍りの不自然な英語で意気揚々と演説している(その口調や語彙はアメリカの黒人英語ですらなかった)。どうやらアメリカ人ではなく、新来のアフリカ移民(帰化二世?)のようだった。
「ネクロモーフの人権を踏みにじる、警察と軍隊は即刻に解体すべきである! 黒人を舐めるなよっ! 劣等な白人どもを焼き殺し、レイプし、奴隷労働させる権利があるんだ!」
そのとき遠い銃声が鳴り響いた。
演説中のユニトロジストの黒人似非牧師が、頭から血を流してひっくり返る。
「ユニトロジーのアホを一人射殺しました、どうぞ」
それは警察特殊部隊員の黒人さん(七代も前からの生粋アメリカ人)が、遠くのビルの上からスナイパーライフルで射殺したのである。怒りに目を血走らせて、トランシーバーで本部に首尾を通信する。
先日に同僚の友人(白人)が、ユニトロジストのガキどもに刺されて殉職した恨みがあるし、ついでに行きつけていた知人の店がユニトロジストのヤクザに多額のミカジメを要求され、ついに店を畳んで逃げるしかなかった事情もあった。
「これからシアトル開放作戦を実施する! キャメル1、そのまま狙撃で援護せよ」
怒り狂ったユニトロジストの叛徒たちが、ネクロモーフを解き放って、包囲している軍隊を撃滅しようとする。しかし戦車が一斉に砲撃を開始し、プロの軍人たちが重機関銃やサブマシンガンで駆逐殲滅を開始する。
戦力差は明らかで、これでようやくシアトルに平和が戻ると思ったそのとき。
急に味方の(国軍側の)戦列が乱れ始める。黒人スナイパーは何事かと、目を瞬き、スコープの先を見つめた。答えはトランシーバーから明かされた。
「毒ガスとダーティーボムを使われた! ポイントD4からの撤退を援護せよ!」
狂ったユニトロジストのテロリスト集団が近隣住民の人質を殺し始め、戦線は再び膠着に陥った。
こういう出来事が日常となっているのだから救いはあるまい。