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Detroit on the Moon「我、人間にあらず」
【二次創作 その他小説】

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奇跡と聖人-1

 その前衛主義で人気の教会ではホムンクルスの牧師が説教をして、人間とホムンクルスの双方から人気を集めていた。本当に素晴らしい内容で、多くの人たちが感動して。
 ところがあるとき、その牧師がただのアンドロイドでしかないとバレた。自我も心もなく、創作者にプログラムされたとおりに(身振りや表情なども)やっていただけ。しかも背後で操っていたのは怪しげな犯罪ギャング組織だったことがバレて、多くの人たちが落胆と絶望に沈んだ。

「畜生! ふざけやがって!」

「あの野郎! ぶっ殺してやる!」

 人々は手に手に松明を持って、詐欺(による資金集め)を働いた教会を包囲し、その怒れる群衆にはホムンクルスの信徒までもが混ざっていた。むしろ人間よりも、ホムンクルスの方が怒りが大きいのかもしれない。

「あんなただの機械人形に騙された! でも俺たちには心があるんだぞ!」

 ホムンクルス(心のあるアンドロイド)である信者には、ほとんど近親憎悪的なものだったのだろうか。アンドロイド(ただの機械人形)の似非牧師が火刑に処せられるのを囲んで眺めながら、生き生きとした凶暴さで人々は騒ぎまくった。
 しかしその真っ最中に、アンドロイドの牧師がこのように叫んだ。

「主(神)よ、どうしてお見捨てになったのですか?」

 それはキリストの磔刑のときの台詞(?)で、絶望というよりも、決まった祈りの文句を唱える途中で亡くなったのだという説もあるらしい。
 ともあれ、それを見た人間やホムンクルスの信者たちは、急に敬虔な感情に突き動かされて跪いたとか。そのままそのアンドロイド牧師は燃えてしまったので事の真相は闇の中だが、最後の最後で自我に目覚めたという見方も有力である。
 そして人々は「神様が憐れんで、ホムンクルスの信者のために別に「アンドロイドのキリスト」を遣わしてくださった」などと囁きあったのだった(神学論争の末、列聖された)。

(アンドロイドの人生相談・完)


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