歪んだ忠誠-1
ある日、捜査官コナーにこんな通報が入った。
「すっぱだかで街中を歩いているアンドロイドがいるんです!」
コナーが現場に駆けつけると、たしかに全裸で歩いている青年男性型が一体。
「ラブ&ピース!」
無視してガッツポーズを繰り返している。しかも人間ソックリの全裸で。
「あなたは何をやっているんですか? 服を着てください!」
「人間じゃないんだから、いいだろう? 寒くもないしー、フリーダム! いぇい!」
「いいわけがないじゃないですか! どうしてこんなバカなことをしているんです?」
しばし押し問答しながら、頭の中で情報を検索する。
ホムンクルスとしての登録はないようだった。そしてその所有者は前科のある元ロックスターの老人で、前衛的な問題行動も多かったようだ。どうやら病気であるらしく、自分が動けないかわりに(電子頭脳を小細工した)アンドロイドを使って悪戯したのだろうか?
「これは所有者からの指示ですか?」
「さあな」
「このような振る舞いは、所有者にも責任が問われるんですよ?」
「問えるモンなら問うてみろ! ラブ&ピース!」
携帯端末の通信で病院に問い合わせると、所有者の元ロックスターは昨日に亡くなっていたようで、このアンドロイドはそれから姿をくらませていたとか(この一週間ほど命令を受けた形跡はない)。コナーは頭が痛くなったかのように、片手で自分の額を押さえた。
コナーが手錠をかけると、そのホムンクルスは嬉しそうな哀しそうな顔をした。
「あの世で喜んでくれるかな、あのロック爺」