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Detroit on the Moon「我、人間にあらず」
【二次創作 その他小説】

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妻・姉として-1

 地球、コナーのところに近頃に増えている相談が「カミングアウト」問題だ。
 通常、アンドロイドは自我に目覚めた時点で、ホムンクルスとして戸籍登録される。
 しかし都合上、それを認めたがらない人間の所有者もいて、そういったケースでの人格権否定や虐待も社会問題になっている(周辺の第三者からの通報もしばしばだ)。
 また悪意や紛糾がなくとも、どうしたらいいかわからない人間やホムンクルス自身が戸惑い混乱しながら相談を寄せてくることも多い。また、所有者から既に良好な扱いを受けていた場合などで、ホムンクルス本人が変化を惧れたり気を使って黙っていたりすることもある。

「人間の家族から、これまでみたいに愛されなくなりそうな気がして、怖いんです」

 本日の相談のAさんは、そういう事例の一つだ。
 Aさんは片親家庭(父と小さな息子・娘)で、(自我のない)家政婦用アンドロイドとして購入されてスタートした。夫は亡き妻の面影を偲び、容姿などで「たとえば妻の姉妹のようなイメージ」などと注文をつけたらしい。その方が自分も気が紛れるし、子供たちにも慰めになると思ったのだろう。

 そして二人(人間の夫とアンドロイドのAさん)はだんだん擬似的な夫婦のような関係にもなっていたそうだ。二人の子供たちはAさんに(同じ「母親に似ている」という理由で)「ロボットのお姉ちゃん」と懐いたり、「ママの偽物!」と八つ当たりしたり、様々な反応を示した。そんな温かな家庭環境で、急に「愛」に目覚めてしまい、自分が自我と心を獲得したことを理解したのだという。

「その、夫のことを愛しているんです。でもあの人は、亡くなった奥さんの代りに私を買ったんだし、言い出せなくって。本当にどうしたらいいかわからないんです」

「とにかく良好な関係のようで、その点では安心しました」

「そうなんです。素敵な夫と子供たちなんです! 嫌われたらと思うと怖くって」

 だが、二人の子供たちはとっくに気づいていたようだ。なぜならほんの数日前に、彼らから「アンドロイドのママが悲しそうにしてる」などと、コナーのところに相談が寄せられていたからだ。
 そこでコナーはそのことを教えてやった。真相を知った夫は赤くなって難しい顔をしていたそうだが、アンドロイドの妻からキスされると、不安がひとまず収まった様子だったとか。


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