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Detroit on the Moon「我、人間にあらず」
【二次創作 その他小説】

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「猫は割と懐くんだよな〜」

 黒人でガタイの良いルーサーは、猫を抱き上げてナデナデしている。
 横からアリスが興味深々に眺めて、おそるおそる手を伸ばす。
 世間で代表的なペットで、一般に犬はアンドロイドには、たとえ自我や心を持ったホムンクルス相手でもあまり懐かない。しかし猫の場合はそうでもない説がある。父と娘のような二人のホムンクルスは農業プラントの片隅で、猫を巡って会話を交わしていた。

「なんでなんだろ?」

「コナーは知ってるだろ? あいつが教えてくれたんだよ」

 コナーはアンドロイド犯罪の捜査官(地球にいる)で、本人もホムンクルス(自我のあるアンドロイド)である。
 ルーサーはポケットから取り出した携帯端末から、コナーの「アンドロイド相談所」のサイトページを開き、「ペットとアンドロイド」の記事を開く。彼は職務の一環として、悲劇を回避するために相談受付やノウハウ情報の公開をしているそうだ。
 そして既に読んでいたルーサーがアリスに解説してやる。

「犬ってのは聴覚や嗅覚が鋭いから。それに昔からずっと人間が大好きで、だからすごくこだわるんだよ。どれだけ俺たちが人間に似てても、やっぱりアンドロイドは身体の中の音も臭いも違うだろ? それで「これは人間じゃない」って、無機物か、自分らには興味がない人間とは別の動物だと思うことが多いらしい」

「そうなの?」

「でも、猫はその辺がアバウトなんだろうな。大雑把に眼が二つで口一つみたいに哺乳類とかの、自分ら猫に似た高等動物の形をしてて、それで友好的に接すれば「仲間だ、友達だ」って思うんだろうってさ。ただの憶測や仮説なんだが、アンドロイドに接したときの脳の反応を比べてみると、そうなんだってさ。犬だと人間とアンドロイドでは全然違う反応なのに、猫の頭の場合は似た反応をするんだとかで」

「ふーん。可愛い」

 アリスの生返事は話を聞いていないのではなく、猫を触るのに夢中だからだ。
 月の都市の農業プラントにつれてこられた猫は不思議そうに目を丸くしていた。


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