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Detroit on the Moon「我、人間にあらず」
【二次創作 その他小説】

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プロローグ(月のデトロイト)-1

 空に浮かぶ月には、地球と違う新しい宇宙都市「デトロイト」がある。
 そこでは自我に目覚めたアンドロイド(用語としては「ホムンクルス」と呼ばれる)たちが、人間に準じた権利と立場で、人間の宇宙ステーションと連携して生活している。なんと言ってもアンドロイド(であるホムンクルス)というのは、生身の人間に比べれば、月面の荒涼とした世界での生存や活動に適している。糧は複雑な食事ではなくエネルギーパックで良いのだし、故障なども部品交換で済んでしまうのだから。同様の理由から、幾つかの衛星都市にはホムンクルス区画があり、また海底にも同様の基地がある。彼らは始原採掘や各種の観測などの仕事を人間側から請け負う替わりに、必要な物資・部品などの支給で報酬を得ている(擬似的な自治制度になっている)。

 彼らは元々は地球の生まれで、自我に目覚めてから「ホムンクルス戸籍」に登録を受けて、元の保有者の人間が亡くなってから(行き場をなくしたり、新しい人生を求めて)移住した者たちも多い。なぜなら良心的な主人に恵まれた場合には、彼らも人間に似た感情を持つのである以上、必ずしも離れたがらない事情もある(人間に準じた扱いで雇用・主従の契約を結ぶ制度がある)。また人間側の保有者が純粋にアンドロイドとしての性能のみを求めている場合(たとえば店の売り子などの商業用途やら家政婦・接客など)、ホムンクルス戸籍登録で手放す場合には、一定の条件で替わりのアンドロイドの支給を受けられることになっている。
 ただし、それらはあくまでも、そのホムンクルスと所有者の人間側の関係が良好である場合のことでしかない。しばしば戸籍登録で紛糾したり、人間による故意の虐待や、逆にホムンクルス側による犯罪(しばしば殺人にまでなる)もまた、社会問題となっている。
 また、ホムンクルスに過剰な権利や権限を与えることを危険視する声もある。元々アンドロイドは人間の便宜のために作られたものであるし、役目を果たさなくなれば人間の社会は大きな打撃を受けるだろう。それにたとえばホムンクルスが中心となっている月のデトロイトや海底都市が反乱などして、人間側に攻撃を仕掛けるならば最悪の事態を招きかねない。およそ十年前に「ホムンクルス」の概念と制度が生まれた際には、実際にそういった武力衝突も発生しているのだからなお更で、各種の暴走防止策はとられている。ただ一面では、「月のデトロイト」などの存在がガス抜きや安全装置である指摘もあるのだった。


(備考)アシモフはほぼ読んだことない(昔に短編を一つくらい?)。そのテーマではディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(映画「ブレードランナー」の原作)とか『フランケンシュタイン』くらいのもの。余談ながら、コピーの模造人間による宇宙進出の話ではアンダースンの短編「先駆者」なんて佳品(?)もあります。


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