昼寝と必然-1
1
考えてみれば、サエをそういうダイレクトな性欲の対象と感じることはかえって少なかったかもしれない。たしかに願望を覚えることがないわけではなかったし、彼女と母との危うい関係のこともあったから、妄想に耽ったことも多々ある。
けれども現実的には年齢の差を自覚してもいたし、何よりも「優しいサエさん」のイメージからの年上の親族女性に感じるような思慕の念が強く、そのおかげもあって健全で普通の関係を保っていたようにも思う。その点はサエも同じのようで「親友・義妹と恋人の子」という庇護欲や愛情が勝っていたのだろう。
その自制の一線が外れかかっていることに背徳的な興奮を感じるのは、玲だけでなくサエも同じらしかった。
そもそも直接の血縁があるわけでもなく、年の差こそあっても男と女なのだった。
「玲君の部屋で?」
「ベッド、二人くらいは入れる」
枠がないのだから、はみ出しても大丈夫でやりやすいはずだった。
手早くシーツの皺を直すサエの尻に目線を這わせつつ、玲はズボンを脱いでシャツとトランクスだけになる。とっく充血して膨らみかけてしまい、どこか感覚が鋭敏になっているようだった。
待ちきれなくなって手を伸ばし、腰からお尻を撫でてやる。
(柔らかい)
女性にこんな触り方をするのは初めてだったし、それだけで虜になりそうな気さえしてくる。母のアヤはたまにベタベタしてくるけれども、それとは意味も触感も違う。サエはもっと柔らかくもガッシリして、まだ服の上から撫でただけなのに、布の裏から肉体の弾力が手指に伝わってくるようだった。
「腕枕、してあげようか?」
つとめて平然と告げるサエの声と唇は少し震えて焦っているようでもあった。
それでも盗み見たのは玲の股間の膨らみだったのだろう。
こんなにも動揺した様子のサエを見るのは初めてだった。
「サエさん、緊張してる?」
「男の人とこんなふうにするの、十年前どころじゃないから」
白い喉がゴクリと鳴る。
どうやら女の覚悟を決めたらしく、ベッドに斜めの仰向けに身を投げて、両手を差し出して差し招いた。
「好きにさせてあげるって、言ったわよね?」
それもサエにとっては勇気だったのかもしれない。儚げな面差しに光る目の真剣さ、玲にも只ならぬ決断を迫られている重さがヒシと実感される。
もしも彼がこんな土壇場で拒否すれば、それこそ身も蓋もなくなってしまうだろう。
大好きなサエさんに恥をかかせたり傷つける気はないし、玲自身にとっても望んだことなのだ。どのみち玲の男は臨戦態勢で今更退くなど絶対に無理。
玲は上から覆いかぶさって、耳元でそっと囁いた。
「これから、犯すよ。サエさんとメチャクチャにSEXする」
全部言い終わらないうちに、玲の手は最短距離で乳房に伸びていた。
まずご挨拶にシャツの上から二三度ほど揉んでから、手早く裾に手を入れて捲り上げてしまう。解放されて弾み出た乳玉は熟した弾力の豊穣さを、まだ衰えない張りのラインで支えている。迷わず吸い付き、滑らかな肌と肉を野獣のように嘗め回す。
「あんっ、玲君! そんないきなり、やらしいよっ!」
そんな悲鳴を上げるサエの呼吸は封を解かれかけた積年の欲情に早まっている。
玲は口と舌先で乳首を丸ごと吸い玩んで、艶やかな肉盛りに顔を埋めながら、貪るように虐める。そんなことをしながらも、ちゃっかり空いた手をサエのハーフのジャージに滑り込ませ、草むらの中の姫貝を掌に収める。そこはとっくにトロリとした牝蜜を吐き出して、歳若く不躾な蹂躙の手を歓迎しているのだった。
「やだ、あっ、やんっ」
その甘ったれた嬌声がやたらと可愛らしく聞こえて、まるで年下の少女と行為しているような錯覚に見舞われてしまう。
長年に渡って男性との経験がなかったのだから、初々しさは半ばホンモノらしい。
「そんなとこ、やだ、はずかし」
言葉とは裏腹に、サエは特に本気で抵抗する様子もない。無作法なまでに急所を押さえられても払いのける素振りもなく、ただ口先だけで嫌がるようなことを言う。ただのお誘いの作法みたいなもので、悦んでいることを暗に伝えようとするポーズなのだろう。
(濡れてる?)
それが汗や尿ではないことくらい、経験のない玲にだってすぐわかった。
粘りとヌメりは淫情の証拠のようなものだった。
「サエさん」
「え? うん?」
つい目を合わせると気恥ずかしそうに目線を逸らす。自分でも予想外だったらしく、己自身の業の深さを恥らって当惑しているかのようだった。
それから忘れていたことを思い出す。
そうだ、キスしなきゃ。
ゆっくりと唇を重ね、それから舌を這いこませる。
サエは急展開に目を見開いたけれど、すぐに自分も舌を出して絡めた。