昼寝と必然-2
2
数秒のキスの後でサエはにわかに冷静になって訊ねる。
「さっきのパスタの味。でも、こんな積極的なのって、あなたってキスの経験くらいはあるわけ?」
そんな大人の余裕を繕っても、突き崩して攻略する闘志を焚きつけるだけなのに。
玲は誇らしげな顔で正直な劣情の挑戦を宣言するのだった。
「ないですよ。サエさんを全力で犯したいだけ」
ヒョイッとサエの両脚を持ち上げ担ぐみたいにして、スルリとハーフパンツを剥いてしまう。パンツさえ履いていないお尻と姫処が丸出しになってしまう。
不意打ちの連続で、とうとう慌てうろたえたサエがやや本気の、抗議の悲鳴を上げる。
「お、おい、玲っ!」
慌てたサエは手で少年の頭をポンポン、払うように叩く。彼女が言いたいことは「ちょっと待て」だろうけれど、成功しかけた奇襲攻撃を止めるバカはいないだろう。
そんなことでメゲる玲ではない。
芯の腹が据わっていて、決めたら迷いがない性格の強さは母譲りなのかもしれなかった。
抵抗する間さえ与えずに、口を押し付けてベロリと舌で舐め、しゃぶった愛蜜をゴクリと飲み下す。
「ういっ? あ、あ」
今度こそサエは本当にたじろいだようだった。
無防備になって火照った恥部を這う舌と口の感覚、しかしそれはアヤではない。
(玲君が私のアソコを)
そんなことを思うにつけ、サエは顔と全身の肌がカッと熱くなってくるようだった。疼くような甘美な痺れが沸き起こって、思わぬ女体感度の高まりと過剰なまでの身体の反応にとっさに身悶えてしまう。
しかもこの少年は鋭く読み取っているのか、はたまた純粋な未知の部位への興味なのか、適確に牝豆や敏感な部分を執拗なまでに反復攻めしてくる。
「ああっ、玲! れいっ、待って、そんなところ!」
無視して責め続ける少年の目は好色に笑い、勝利感に輝いているようだった。
そうこうするうちにサエは奥の子宮からまで悦楽の汁が決壊してくる。
(うわっ! 早い、早いよ! こんなに感じるだなんて)
自分がどれだけ男を、いや、かつての恋人との蜜事の幻影を求めていたのかがイヤでもわかりかけてくる。今まさに自分を蹂躙しているのは、唯一愛して身体を許した彼の子供で、しかも幼少の頃から手塩にかけてきた「玲」。
ひょっとすると自分で知らないうちに、もの欲しそうな目をしていたのだろうか?
そんなことを考えるだけでいたたまれなくなるくせに、希望に触れた女体はとっくに暴走してしまっているのだった。
「あ、ああ、あああ」
悩ましい喉から漏れる悦楽の音はあられもなく情けなかった。
まるで赤ちゃんがおしめを取り替えるような格好のままで、逆らえなくなって舐められるほどに、どんどん極点に煽り立てられていくようだった。
「ううっ!」
どうにかとっさに、両手で玲の頭を陥落寸前の愛の花園から引き離すときには、サエの視界と目尻には懊悩の涙すら浮かんでいた。
(あとちょっとでイキそうだったかも)
サエとしては窮地を脱してホッとしたくせに、ヌメって加熱した姫貝は名残惜しいと訴えてくるようで、心身のアンバランスさに困ってしまう。こんな青二才で経験もない少年に一方的に気持ちよくさせてもらうのは、情けなくもあるのがプライドか。
「玲君」
照れ隠しにモニュッと頬をつかんで軽く引っ張ってやる。
叱りつけようかとも思ったが、それも何かが違う気がする。そもそも合意でやってるのに予想外の展開に戸惑ってしまっていた。
玲はやや残念そうな顔をするばかりで、半分笑うようで悪びれる様子もない。むしろ感じさせることが出来たのがよほど嬉しいらしく、色気づいてランランとした瞳を肉食の小動物のようにキラキラさせている。
(うっ!)
とっさにサエの頭を過ぎった言葉が「可愛い」だったのは皮肉だろうか。こんなにも夢中になってくれた嬉しさに胸の奥がキュンと甘く疼くようだった。「食べられてしまいたい」とさえ感じるほどに。
かといって、そんなに簡単に年上の尊厳を放棄して失うわけにもいかない。
「気持ち良かった?」
期待に満ちた眼差しで問いかけてくるのだから、本当にたちが悪い。
サエは悔しそうな表情で不承不承にでも認めるしかない。
「感じた、けど」
話の隙に拘束から逃れ、どうにか起き直る。
今一歩の不発になった子宮はダラダラとよだれを垂らし、尻に流れて玲のシーツを汚してしまう。けれどもサエには細かいことを気にかける余裕もない。
「イキそうだったとか?」
耳元で図星を突かれてサエはふうっと溜め息を吐く。