ありふれた言葉でも。-4
「僕を好きじゃなくなったら、ちゃんと云って欲しいんだ。君が僕を見たくなくなったら、そう云ってくれ」
「解った。そうする」
頷いて、夕香は少し震える手で滝田の手に触れた。
「今日の先生は、大好き」
それが続くかは解らない。この温もりがいつまでもここにあるとは限らない。
だからこそ、それが愛しくて―――滝田はその手に触れた。
手はちゃんと、温かかった。
「明日は?」
「解んないけど、もっと好き」
「僕もだ」
滝田は少し迷ってから、囁く。
「僕もだよ。夕香」
明日も、明後日も、きっと君が好きだろう。その積み重ねが続けば良いと滝田は思う。
人の温もりはいつか必ず失われてしまうけれど。
その瞬間まで、夕香が幸せだと良い。
それが滝田の願いだ。
だから滝田は、夕香の手を握った。
強く。