古内ひかり-2
古内の母・友里コーチ(43歳)は中学3年だった1989年に100m背泳ぎで日本選手権を制したが、高校入学以降は目立った実績を残せず大学卒業と同時に引退。その影響もあってか、一人娘を指導するときには目先のことにこだわらないようにしているという。コーチとしての母をどう考えているのか?
−−お母さんがコーチで苦労することは?
ひかり「ないですね。何でも言いたいことを言えるし、他のコーチよりも私のことをわかってくれてるって思っているし。『学校に行っているとき以外お母さんと一緒って疲れない?』って友達や他のクラブのコーチに言われますけど、お母さんと一緒にいるときの方が気持ちは楽です。ジュニア世界選手権はお母さんが帯同コーチになってくれたから金メダルを獲れたと思います」
−−全日本選抜の時にはお母さんはどうしていた?
ひかり「初めにお母さんにオファーが届いたんです。資料に『練習着含めて水着を持ち込まないで』って書いてあったのを私が見て不安だって言いましたけど『裸で泳ぐわけじゃないから』ってお母さんが書類にサインしました。更衣室と検量所では裸になったしお母さんと一緒じゃないし不安でしたけど『条件が近くなるから普通のレースと同じようにやればいいよ』って言ってくれて、いつも通りウォーミングアップに付き合ってくれました」
−−家にいるときのお母さんは?
ひかり「普通のお母さんだと思います。家ではあまり水泳のことは話さないけど、普段の生活の面では厳しいこともいうかな。夜更かしするなとか、忘れ物するなとか。でも、一緒に食事の支度をしたり洗濯や掃除の手伝いをしたりすると楽しいですよ」
−−お母さんのスタイルワン(専門種目)でもあった背泳ぎと個人メドレーでは、どちらの指導が熱心だと思う?
ひかり「あまり考えたことないですけど、細かいところまでアドバイスしているなというなら背泳ぎの方かな。『自分はこうしたけどヒーちゃん(古内の呼び名)ならこうした方がいいかな』って始めると、一緒にプールに入って泳いで見せたり手取り足取りしたりして結構時間かかるんです。個人メドレーはそんなに時間かけません。通しで何本か泳いで、それからターンを確認するくらいですね」
−−お母さんの思いを背負っていると言う意識は?
ひかり「うーん…、ないですね。水泳やりたいっていたのは私からだし、お母さんがどうこう言うこともありませんでした。もちろん反対されることもなかったです。幼稚園の時、お母さんがコーチとしていろんな子を楽しそうに教えているのをスクールの託児所を見ていて私もその輪の中に入りたいって思ったのが水泳を始めたきっかけで、お母さんを意識したのはそれくらいですね。お母さんが世界選手権やオリンピックで代表になれなかったからその分私が頑張ろうと息巻くこともありません」
−−この後のシーズンは高校生になるが、これからの目標は?
ひかり「世界を狙えるかもしれないという感触がだんだん強くなっているので、この気持ちを忘れないようにとにかく練習していきたいです」
−−お母さんの指導は受け続けるつもり?
ひかり「はい。寮に入らないといけないような遠い高校に行くつもりはないですし、お母さんだからこそわかることがまだあるかもしれないので、これからも指導を受けるつもりです」
<自然体の親子>
○…コーチでもある母・友里さんにとって古内は一人娘。練習はお互い自然体で取り組んでいる。
「好きなことを好きなだけやらせてあげるための手伝いをしている感覚で指導しています。生活の中に水泳があって、ヒーちゃんは何の抵抗もなくプールに興味を持ったと思います。だから、親の無念を子どもに晴らしてもらおうなんて悲壮感はありませんよ」
泊まりがけの遠征に出るとき、宿舎が親子同部屋になると家族旅行のように親子共々リラックスしているという。
「レース前日だと打ち合わせをしますし、レースが終わったら反省会もします。でも、お互いピリピリすることなく、家の中で世間話するような感じで話していますよ」
来年以降、古内には大会史上初となる日本選手権の同一種目親子制覇がかかるが、
「特別に意識してはいません。1バックでヒーちゃんが優勝すればたまたまそういう結果になったというだけだと思いますし。ヒーちゃん本人も『お母さんと同じ大会で優勝したい』って言ったことないですから、意識していないと思いますよ」
と意を介さない。もし、友里さんが全日本選抜のような大会に出場したら、と問いかけると
「ヒーちゃんと同じくらいの年代で出場すると、私も萎縮しちゃうかもしれませんね。大学生くらいの人の裸を見ると自分の身体にやっぱり自信を持てなくなるかと思います。
年齢がある程度上になれば普通通りに振る舞えるようになるかな」
と自分のイメージを描きながら応えた。
古内ひかり(ふるうち・ひかり)
2002年9月18日生まれの15歳。
小学6年だった2014年、50mと100m背泳ぎで日本選手権決勝に進出(ともに6位)。
中学2年だった2016年には100m背泳ぎと200m個人メドレーでジュニア世界選手権金メダルを獲得。中学3年間には100m・200m背泳ぎと200m個人メドレーで全国中学3連覇。
151p39s、スリーサイズは75(AAカップ)・55・78。