腹上死ハネムーンの花嫁(最終話)-7
リョウは莉亜が本気で恥じらい悶える様だけでも大満足だったけれども、あまり虐めるのも可哀想にも思った。それにこんなことをやっている目的は遊びではなく、第一に座薬を入れることなのである。
けれども長々と遊んでしまう理由は内心で不安でもあったからだ。
もしもこの薬が効かないどころか、かえって害があるとかだったらどうする?
「莉亜。本当にいいの。この薬」
「ええ。あなたにして貰いたい。ワガママかもしれないし、もしリョウが嫌だったら自分でやっちゃうけど」
「そう。じゃあやるよ」
小さな弾丸のような錠剤を指でつまみ、流れた愛液で濡れた菊座に押し当てる。
予感して、勇気を出して力を抜こうとする。
(あっ、入ってくる。指まで)
ヌルリと押し込まれた座薬は肛門の輪を潜って直腸に滑り込んだ。
少しでもそんな場所に指を触れられ押し込まれたことで、莉亜は未知のエクスタシーでうち奮えんばかりになる。
「あっ、う」
直腸から子宮と膣に甘い電気が走ったようになって、濡れた姫貝が新しい蜜液をドプリと吐き出してしまう。
莉亜は睨むような淫情の目をリョウの顔に投げる。
「リョウ。コンドーム、持ってきてる?」
それは勝負を挑む女の顔。男に避けられぬ肉交の覚悟を迫る面差しだった。
「今日はまだ持ってきてない」
幸か不幸か、リョウはその準備を忘れていた。薬のことで頭が一杯だったからだ。
莉亜の唇と目顔には不安が広がり、悩ましげな目許には涙が浮かんでる。
「リョウのチンチン頂戴」
「薬入れたばっかりだけど」
大丈夫かとリョウも不安だった。
もしも薬のはずが毒だったらどうするのかと、そればかりが気になるのだ。
莉亜は急に起き上がって、リョウのズボンの膨らんだ股間を撫でた。
「だからよ。怖いのよ。だからお願い」
まさぐる女の指は力こそなかったけれど、決意の手つきでジッパーを下げる。ズボンとパンツを獰猛な調子でひっぺがし、飛び出したそれにむしゃぶりつく。
「ハァ、ハァ、こんなにしてるくせに、私のことなんて言えた義理なの?」
鬼気迫る牝獣はリョウのフランクフルトを貪欲な凶暴さで横咥えして、卑猥になった舌で先走りの濡れ汁をペロリと舐める。まるで領土の所有権を主張するかのような、確固とした戦意が瞳に燃えていた。
「気持ちイイんでしょ」
「出ちゃう」
たじろぐリョウだって、どうせ帰りにトイレで抜かないとダメかもしれないとは思ってはいたのだ。莉亜を弄っている間に励起してしまって、カウパー汁まみれでいつ暴発してもおかしくなかった。
莉亜は勝利の微笑を浮かべて目を輝かせる。
こんな座薬の挿入のような恥ずかしいことをされて、それで好きな男が全くの無反応だったら、女としては逆に立場がないのかもしれない。
「だったら飲ませて」
喉の奥に咥え込み、舌と上顎で挟み込んでくる。手指は繊細に金玉を握り揉む。それこそ彼女が一番に慣れているやり方だけあって上手だった。前後に頭ごと動かし、蠢く舌や頬の粘膜でペニスを擦りたててくる。
リョウが最初に予想したよりも、射精耐久の限界が迫るのはずっと早かった。性快感が下腹の奥や腰に電流のように走る。それで自分が如何に性的に切羽詰って追い詰められていたのかを思い知らされてしまう。
「うう、出るっ!」
ドクリドクリと口内射精されながら、莉亜は死闘に勝利したように目を煌かせ、ペニスを咥えたままの唇と顔でニヤリと笑ったようだった。
そのまま頬張っていて、サクランボを舌で玩んで吸いたてる。
精一杯に細腕で悩ましく、リョウの腰にしがみついて逃げることを絶対に許さず、鋭敏になった陰茎をいたぶり続ける。まるで赤ん坊がおしゃぶりに執着するかのような風情でもある。よがって呻く少年を楽しげな上目遣いがチラチラ盗み見する。
そのまま三分くらいはそうしていただろうか。
ようやく解放した莉亜は、サイドテーブルの水差しからコップに注ぎ、ゴクゴクと飲む。
「喉にからむのよね。リョウの「お薬シロップ」」
莉亜はなまめく唇をペロリと舐める。
それから胸にもたれかかって眠りに落ちる。服用直後の副作用の眠気なのだろうか。
(すごく幸せそうな寝顔)
やたらと安らかで満足そうなので、薬への不安もいささか和らぐ。
8
そうしてつき添っていて二時間ほどして目が覚めると、莉亜はベッドの横にいたリョウに開口一番でこう言った。
「どうして寝てる間に犯さなかったの? 何されたって良かったのに」
「莉亜が良くなったら、そうするよ」
もうじき病院の面会時間も終わる。
たぶん次のお見舞いの差し入れはコンドームなんだろう。
(今日は寝る前に、リョウのバイブ挿れなくっちゃ。それと日記も)
見送りながら莉亜は真面目に考える。
(パパとママにも、リョウや二宮先生にも……ちゃんと「ありがとう」「幸せ」って)
もしもいざというときに、やっぱりリョウや二宮先生に迷惑はかけたくない。もしこの後でさっきの薬の副作用で自分が死んだりしたら、一人で勝手に得体の知れぬ薬を飲んで変態行為していたことになったほうがまだ良かったからだ。
(「ドッペルゲンガーの恋人」完)