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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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腹上死ハネムーンの花嫁(最終話)-5

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 アフターサービスと称して、寮の携帯電話に送られてきた謎のメールには、聞いたこともない数種類の薬品名が記されていた。

「パラレル世界の、長生きした「別の私」の息子が医薬品に詳しかったので、そちらで調べて貰ったら分かったんです。母さんにもよろしく。今の私は幽霊みたいなものですけど、こっちはこっちで元気にやってます。途野先輩と撮った写真を添付しますので、見せてあげてください。/水母の光ホテルフロント係、二宮アヤ」

 リョウが半信半疑ながらにも、莉亜の主治医である女医の二宮先生に携帯電話のメール文を見せてみたところ、最後まで読んで顔色が変わりついに泣き出してしまった。
 添付されていたデジタル写真の中の二宮アヤはあのときの可憐な制服姿で、同年代らしき眼鏡の女車掌と一緒に、あの異次元メトロ地下鉄駅の看板の前でポーズをキメている。ちょっとはにかむような、しかし幸福で充実した微笑はとても印象的だった。

「アヤはね、私の娘なの。もう死んで何年も経つけれど」

 そう言って二宮先生は涙ぐむ。
 どうやらあの不思議なメトロのフロントの少女は、二宮先生の亡くなった娘さんだったらしかった。その後に幽霊になって、あの謎のミラクル地下鉄のホテルで摩訶不思議な事業と業務の従業員になっているらしかった。
 彼女は彼女なりの天国のような場所に辿り着いたのかもしれない。夭折した幽霊とは言いながらも、たぶんリョウや普通の人間からすれば、おそらくは「天使に近い何か」になったのだろう(世間一般の観念での、害を与える悪霊・怨霊の類ではない)。そのことだけでも随分救いになるはず。
 そしてそのメールにはとても大事な情報が記されていた。
 現在に海外で販売されている或る非認可製薬。日本では認可されておらず、保険も適用されない。もちろん特殊な薬であることもあって知名度も低く、たとえ医療の専門家でもそうそう発見するのは難しいだろう。しかもそれは、本来の用途とはやや違う目的、莉亜の持病に少なからず「効く」のだという(容量・用法や作用・副作用なども詳細に書かれていた)。そして遠くない未来にもっといい薬が開発され、日本でも認可が下りるのだとか。それらの名前や開発される年、国名なども合わせて記されている。

「信じていいのかしら? それに日本の保険の適用でも問題があるわ」

 思慮深げに二宮先生は見解を口にする。
 だが反則じみていて、厳密には違法でもあるにせよ、それは。

「でも、それで莉亜は、助かるかもしれないんですよね?」

 どうせこのまま衰弱死するくらいなら、試してみる価値はあるに違いなかった。


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