売人ヤクザを娘の仇で殺し続けるパパ-4
カリーナは無慈悲に耳を覆いたくなるような説明をするのだった。
「把握している時間線の統計ですと、ハルカさんの場合は二人に一人くらいは四十までに不自然な死に方しますし、かなり不幸な星の元にお生まれですね。ついで三人に一人くらいはアダルトビデオに出たり売春婦になってます」
「そ、そうなのか……」
愕然とする斉藤氏。父親としてかなり複雑な気分なのだろう。
先ほどまであれほど憎かった金木への恨みが潮のように引いていくようだった。その心理には十分に復讐を果たしたことも手伝っているだろうし、カリーナとしても計算づくでこんな話をしているのかもしれない。永遠に際限なく復讐し続けるわけには行かないし、悲痛な事情でここに来たお客様を狂った殺人狂にするつもりもないからだ。
ニコニコ顔のカリーナは一枚の写真を取り出す。
「それで、こちらがお孫さんになります。一番多いパターンからの一枚」
「おお! ハルカに良く似ている……」
うって変わって瞳を輝かせる斉藤氏には、つい先ほどまでの阿修羅の形相はもはやない。
心の平穏を取り戻して正気に戻ったのだ。
「その世界でもハルカさんは不運続きと自暴自棄で、パパはいきずりの男なんですけど、娘が生まれてから立ち直って更正したみたいですね」
「ふうむ、そうなのか……」
苦笑いした斎藤昭彦は写真を返そうとする。
するとカリーナは山猫のようにキラリと目を光らせて言った。
「そのままお持ちになっても構いませんよ。どうせ『日持ち』はしませんから、元の世界に持って帰ったら二三日で消えてなくなっちゃいますけども。それからなんだったら、ついでにハルカさんのSMプレイの女王様とマゾ写真セットなんかもいかがですか?」
「……うーむ、そっちは遠慮しておくよ。きっと気が狂いそうになるから……」
お土産は皐月ちゃんの写真一枚。
元の世界に帰ったら妻に見せてやりたいのだと言って。