松村奈央-1
自由形短距離とバタフライの4種目に出場した松村奈央。激戦区で存在感をみせる彼女のモチベーションとは?
−−今回の全日本選抜に向けて、普段行動を共にしている小林日菜子さん(同じクラブに所属して長女結菜12歳と次女香菜10歳の指導もしている)と何か対策を話し合ったのか?
奈央「前日の検量で水着を受け取ったときに着方について話し合いました。ヒナさん(小林)が『昔使っていたのと同じ』って教えてくれたので試着の時に着るのを手伝ってもらいました。極端にバストもヒップも大きくないのであまり窮屈な感じはないし、手足も普段のハーフスーツよりも動きやすかったから、着方に特別な意識をしませんでしたね。泳いでみても変なきつさはなかったですし」
−−出場種目を絞った選手がいる中で4種目に出たが、その意図は?
奈央「シーズンがいつもより長く続いていると考えているだけで、多い少ないの意識はありませんでした。だから意図という意図はないです」
−−じゃぁ、大会にどんな意識を持ってのぞんだ?
奈央「水着は違うけどやることは同じだから特別に意識することはありませんでした。強いて言えば、4つ全部シーズンベストを揃えたいなってことですかね。世界選手権の代表になれなかったのでせめてここで爪痕残したいなって気持ち強かったですね。特に1バタ(100mバタフライ)では(柴田)真理子に負けたくないって(日本選手権のこの種目で柴田に敗れ、世界選手権代表入りの望みが絶たれた)」
−−全日本選抜では全裸検量や同じ水着の配布とか、通常の大会ではない試みがあった。
実際参加してみての感想は?
奈央「女の子同士だったから裸になるのに抵抗はありませんでしたね。モデルの仕事をしているときでも女性のスタイリストさんと一緒に裸のままでフィッティングをすることもあるので。同じ水着でレースをするのは初めてでしたけど、こういうのもいいかなって思いました。水着にあまりこだわるタイプじゃないんで、ハイレグワンピースも抵抗なかったです。大会の水着、持って帰りましたよ」
−−自由形の短距離では高校生の川口ルリカ、バタフライでは柴田真理子と対戦したが、対戦しての感触は?
奈央「真理子とは1バタだけでしたけど、久しぶりにいいレースが出来たと思います。そこでいいイメージができたからハンバタ(50mバタフライ)で優勝できたのかなとも思います。小学生の時からそうなんですけど、真理子と一緒だと私が真理子に泳ぎのリズムを合わせることが多いんです。でも、この日はあえて合わせないようにしようと思ってやってみました。そうしたら思った以上に粘れたんでタイムが上がったのかなと思います。真理子がハグしてきたときはうれしかったですね。こんなこと今までなかったですから。フリーは予選で良くてもそのイメージが続かなかったですね。大会が終わった後、ヒナさんにビデオを見ながら相談したら、『予選で楽に泳げても決勝で川口さんについていこうとしてキックが硬くなってついていけなくなったのがいけない』って教えてくれました。残り15mで川口さんに離されないようにって意識して無理矢理テンポを上げて無理がきたのかなと思います。うーん、川口さんって、残り15mでもペースを上げられるというか、ギアを変えられるからすごいですよね。そういうペースチェンジにも慌てないようにしないといけませんね。そういう意味ではこれからにつながる大会になったと思います」
−−やっぱり柴田に対する意識はかなりのもの?
奈央「そうですね。小学校4年の時に協会のエリート合宿でバタフライのグループで一緒に練習したときに初めて面識をもちましたけど、その直前のジュニアオリンピックのハンバタの決勝で対戦したのが初対面ですから15年近くの付き合いになりますね。小学校の時から真理子は同い年の子の中で飛び抜けて大きくて、記録も群を抜いていました。身体が大きくなって多少変わる部分はありますけど、基本線にある大きな泳ぎは変わらないですよ。真理子に追いつけ追い越せの気持ちで頑張り続けている自覚はその頃からありましたね。中学に入って記録が頭打ちになって真理子に追いつくのは無理かなと思って一度バタフライを諦めてフリーの短距離に転向しました。インターハイで50・100のフリーで3連覇したり世界選手権の代表になったりしましたが、やっぱり真理子に勝ったわけじゃないから…という、何というか、埋めきれない空白みたいなものがあるように思えて、大学でバタフライと両立させようと思いました。メドレーリレーで真理子と同じチームになってバタフライの真理子からフリーの私へ引き継ぐこともありますけど、いつも真理子からメダル争いのための力をもらっているような気がして頑張れるんだって思います。一度バタフライから離れたからわかったかもしれませんね」
全日本選抜のあとにも松村がアドバイスを仰いだという小林日菜子は、大学卒業後の松村に大きな影響を与え続けている。
−−日菜子さんと関わりを持つようになったのはいつから?
奈央「大学卒業してからです。それまでは大学の先輩・後輩の関係で交流がありましたけど、あいさつと一言二言くらいのアドバイスを受ける程度で、あまり深く関わることはありませんでした。でも、大学卒業間際にヒナさんが『うちのクラブで練習したら?』って声かけてくれたので今のようなお付き合いするようになりました」