『続・愛実』-1
『やったーっ!』
合格発表が貼りだされた掲示板の前で友達と手を取り小踊りして喜ぶ愛実……
高校の合格発表を見て、愛実が最初にした事は……先生!やったよ〜!合格した(^^)v……前田に報告のメール送信……親に報告するより先に、大好きな前田先生に……
あの日から、一年半の月日が流れていた……あの日以来、愛実と前田は頻繁にメールを交換する様になっていた……
五分もしないうちに、愛実の携帯がメールの着信を告げる……前田からの祝福のメール……
今から塾に行くネッ!……愛実はスグに前田に返信をした……
高校から塾に直行した愛実は、講師控え室を覗き込む……前田と目が合い両手を千切れんばかりに振ると、前田がニッコリと微笑んで近づいてきた……
「おめでとう!愛実ちゃん。何かお祝いしないとね……」
ウンウンと大きく二度頷いた愛実は……
『お祝い!お祝い!今日お祝いしてー!』
と屈託のない笑顔で前田に、おねだりをした……
「はい、はい、講義が終わったら、お祝いしようか……」
前田の講義が終わるまでの一時を、自習室で待つ事にした愛実……脳裏には、一年半前のあの出来事が浮かんでいた……
「お待たせしました……」
前田が愛実の待つ、自習室に現われる……
「じゃあ、行きますか……」
赤いスポーツタイプの車の助手席に座った愛実は、笑みが零れるのを押さえきれない様子であった……
「愛実ちゃん、何処に行きたい?」
『先生の家!……なんてね……』
前田は笑いながらアクセルを踏み込んだ……
街道沿いを二十分程走っただろうか……車は、細い路地を何度か曲がり、あるマンションの前に停車する……
「はい、お待ちどう様……僕の住んでるマンションだよ……」
『本当に先生の家、来たんだぁ……』
……先生の奥さんって、勤務先が離れてて……確か……週末しか帰ってこないって……と、言うことは……先生と……私……二人きり……マンションの廊下を歩きながら、愛実の心臓は破裂しそうな位、バクバクと脈を打っていた……
「ここだよ……」
廊下の突き当たりの部屋の扉が開かれた……明かりの点いていない室内……少し淀んだ空気が二人を出迎えた……
「さぁ、遠慮しないで……上がって……」
玄関の明かりを点けながら、愛実を招き入れる……
『はーぃ……』
前田の背後で、カチャリ……扉の鍵の閉まる音がした……
『先生っ……』
愛実が前田を見上げると、前田の手が、すうっと伸び……愛実の小さな体を包み込んだ……
「愛実ちゃん……おめでとう……本当に良かったね……」
いつもと変わらぬ優しい口調の前田……自然に二人の唇は重なり合っていた……
長い口付けを交わした二人……前田は愛実の手を取ると、玄関を上がってすぐの扉を開け、愛実を部屋のなかに導いた……
分厚いカーテンの隙間から、僅かに外の明かりが差し込んでいた……あまり大きくは無い部屋の中央に、大きなダブルベット……
「…………」
『…………』
静寂な部屋の中……愛実の耳の奥で、高鳴る鼓動の音が響いている……
「愛実ちゃん……約束があったよね……」
前田が愛実の耳元で囁いた……
『……』
愛実は無言で、こくりと頷いた……