夏から初冬への企み-1
学生たちが、夏休み真っ盛りの午後4時過ぎ。
勤め先である、母親が営む商店から自宅に帰ってきたQ恵は、閉じられたリビングの引き戸のすき間からもれてくるエアコンの冷風に気づいた。
(お、V平クン。夏の天体観察の合宿から帰って来てるな。)
引き戸を静かに開くと、ソファーにねそべるV平の姿が見えた。(うひゃー……)Q恵は思わず目を寄せた。
V平は、ズボンと下着を足首あたりまでずらし、下半身ムキ出しで眠っていた。V平の左手はだらしなく垂れたチンポをにぎりしめ、右手の近くにはタブレットが裏返しになって置かれていた。
(合宿で何か緊張を強いられたんだな…… それから解放されて、一気にオナニーに走ってしまったのね。)
V平がにぎるチンポを見つめて、Q恵は遠い日を思いだした。
十数歳年齢の離れた姉であるQ恵にとってV平は、弟というよりわが子だった。
V平が乳児のころから一緒に入浴し、その性器の成長を見つめてきたQ恵。
そしておそらくV平にとっても一緒に入浴するQ恵は、姉というよりもう「オトナのオンナ」であったに違いない。
だが、V平の成長につれて一緒に入浴する機会はなくなり、Q恵にはV平の「オトナのオトコ」の身体を見つめる機会がなかった。
(あの下着の奥には、こんなに立派になったチンポがひそんでたんだなぁー……って、こんな鑑賞してる場合じゃないな。)
今ここでV平を起こすわけにいかない。(私は別に気にしないけど、V平が私にオナニーの現場見られたってのはダメージありそうだもんなぁ……)
Q恵は少し考えるとリビングを出て、静かに引き戸を閉めた。そして自宅から離れていった。
○
紅葉がすっかり散ったころ。
k校の授業が終わり、校門を出たV平は駅までの道を歩く途中、女性に呼びとめられた。
「ど、どなたですか……って、え!あ、お姉ちゃん?!」
「そう。アネですよ。」
「どうしたの?こんなスーツなんか着て。」
「お母ちゃんに頼まれて、ちょっとあらたまった所へあいさつに行くことになって…… 近くまで来たから、キミといっしょに帰りたくなったのだ。」
「……それにしても、なんで髪 三つ編みにしたの?」
「まあ、単に下校してくる女の子たち見てると、合わせたくなっただけなのね。」
Q恵は、V平の手をとった。
「このまま帰るのも芸がないから、ちょっとそこでティータイムしようや。」