月の詩-3
俺はなんでこの話にもっと想いを入れなかったのか。
なんていい加減な気持ちで放置してしまっていたのか。
俺がもっと・・・。
後悔ばかりが押し寄せてきてがっくりと項垂れる。
「仕方ねぇよ。誰だってこんな風になるなんて思わないんだから。」
俺の気持ちを読んだかのようにぽん、と肩を叩く。
徹が「思い出せ」と強く俺に言ったのは、きっと3人目の殺人が次の日にされたから・・・。
ゆっくりと捜査している余裕がなかったからだろう。
徹が俺を慰めようとして放った言葉が心に突き刺さる。
事態は一刻を争う。
とにかくこの市内の公園を片っ端から調べる、というとんでもなく地道な作業をすることになった。
地図を開き、二人で呆然とする。
「な、こんなに公園ってあるのか?」
「・・・以外に多いな。」
普段意識して街並みを見ていなかったが、市内には25箇所もの公園があった。
正直、お互い戸惑ったが、やるしかない。
二手に別れ、互いに何かあったら携帯に電話するようにし、徹と別行動をとる。
「ここも、違う。」
はぁ・・・と溜め息が自然に漏れる。
ここで12箇所。
車で移動しているとはいえ、結構な労働だ。
「あと、1箇所・・・。」
徹からは何の連絡も無い。
多分、自分と同じ状況なのだろう。
気付けば辺りは薄暗くなっていた。
確信の手がかりのない状態で不安と苛立ちを募らせながら、俺は最後の公園に向かった。
あ、この公園・・・。
何となくだけど。でも確かに懐かしいような感じ。
初めて来るのに、何だか知っていたような。
デジャ・ヴ?
体が、ざわつく。
とりあえず徹に電話するが、運転中なのか話中なのか繋がらない。
ゆっくり公園の中に入る。
進んでいくとそこには全ての環境が整っていた。
ベンチと丸い電灯、公園の横の団地・・・。
辺りは薄暗くなっている。
全て、自分が生み出した状態。
そして、その揃った状況が生み出すものは・・・。
俺は、慌てて電灯の側に近づく。
だが遅かった。
目の前では倒れた女性とそれに馬乗りになった彼女。
下の女性の胸にはCの字・・・いや彼女の痕である証拠の三日月の印。
「月夜・・・っ。」
思わず叫んだ。
まだ、話の中にも出てきていない、きっと本人もまだ知らないであろうその名前を。
名前を呼ばれた彼女は長い黒髪を掻き揚げながらゆっくりと振り向いた。
その容姿さえ、俺の創造した通り。
腰まである長い黒髪。
闇のような深いダークブルーの切れ長な瞳。
通った鼻筋。
薄い唇。
綺麗で冷たい表情。
「ふう〜・・・ん。それが私の名前?」
目を細め笑う。
す・・・と立ち上がり真っ直ぐこちらに向かって歩いてくる。
「月夜?」
その瞳は自分に対して憎悪を含んでいてその場から逃げ出したくなるほどだった。
目の前に立つと、そのまま冷たい・・・蔑むような笑みを浮かべる。