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月の詩
【ミステリー その他小説】

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月の詩-2

20分くらいで徹はうちにやって来た。
「・・・で、どういうことだ?」
普段の軽い印象はなりを潜め、険しい顔をして俺を見る。
俺は、徹に自分の未完小説の話をした。

「は・・・?それだけ?」
話を聞いて第一声が呆れたような、肩の力が抜けたような返事だった。
「偶然じゃねぇの?」
そう言うと、胸ポケットから煙草を抜き、ジッポの火を煙草に近づける。


「・・・殺された2人、胸に引っかき傷のようなアルファベットのCの字が残ってなかったか?」
ぴたり、と徹の動きが止まり、ジッポをカチン、と閉じる。
「どうして、それを?」
徹が疑いの眼差しで俺を見る。
無理も無い。胸の傷はマスコミには漏らしていない、それは警察か・・・もしくは犯人しか知らない事実。

す・・・と俺は未完の小説を徹に渡した。
徹は、小説を一通り読んだ後
「お前じゃ、ないんだよな?」
ちらりとこちらを見て言う。
「・・・疑いたくなるのは分かるけど、俺じゃない。最初の殺人があった日はお前と飲んでいただろう?」
「・・・この話の内容、他の誰か知っているやつや、見せたことは?」
「残念ながら、誰かに話したこともなければ見せたのもお前だけだ。」
「こんな非現実的なこと、信じられねぇな・・・。」
ふぅっ、と溜め息を一つ吐く。
「だよな。俺だって信じられない・・・っつうか、信じたくない。」
お互い無言になる。

暫くの静かな空間を止めたのは徹の方だった。
「・・・なぁ、3人目までこの話あったよな。」
「あぁ・・・。」
夕方の公園で、主婦が一人殺されて・・・話は終わっていた。

「あれはどこの公園を指しているんだ?」

「どこ・・・?そんなの・・・。」
わからない・・・と言おうとした。
だってそうだろう?
何年も前に作った話だし、そんなこと覚えているわけがない。

「思い出せよ!」

はっ・・・とする。
徹が警官としての顔に戻っていたから。
命を救いたい、と訴えていたから。

「ちょっと、待ってくれ・・・。」
その表情を見て、必死で記憶の糸を辿る。

3人目に殺されたのは公園の近くに住む38歳の主婦。
公園近くの団地に家族4人平和に暮らしていた。
その日はたまたま醤油を切らし、夕方買い物に出かけていて・・・
殺された。
殺された側にはベンチと丸い・・・まるで満月のような静かに辺りを照らす電灯が一つ。

「近くに団地と・・・スーパーがある公園。ベンチと、丸い電灯がある。」
心苦しいが、それしか答えられなかった。
それ以外の設定をした覚えがないから。
「情報・・・少なすぎ。」
眉間に皺を寄せ、徹が呟く。
「ごめん。」
俺は、謝ることしかできなかった。


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