小林日菜子-2
−−1日目の会見で「高校の頃を思い出した」と話したが、その真意は?
日菜子「私が日本選手権に初めて出た頃を思い出したんです。泳ぐのが好きなだけで中学の水泳部に入った私がテレビで見たことあるような選手と一緒に泳ぐなんて信じられなくて何日も前から興奮していました。大会に入ってからもテンションは上がったままで、これまでで一番動けて50m(自由形)、100m(自由形)で自己ベストを出せてまた興奮しちゃって。水着は水色のプレーンなやつで、サブプールでウォーミングアップした後にプールを出ると乳首が見えたのでキャーッていいながらセームを隠してはしゃいでいたのもいい思い出ですね。ハイレグの水着を着てトップクラスの選手と泳いでいるうちにあの時の高揚感がよみがえったから、初めて出た大きな大会のことを思い出したんです」
日本選手権初出場の93年は全種目予選落ち。その後、大学に入学した96年から50m自由形で日本選手権4連覇、100m自由形では96年と99年に優勝した。ただ泳ぐのが好きな中学生は自由形短距離のエースになり、オリンピック(2000年50m自由形)と世界選手権(2003年50m自由形)でメダルを獲得するまでに成長した。そして、結婚・出産を経て、40歳で迎えた2017年日本選手権で25年連続出場を果たした。
−−40歳現役って、想像していた?
日菜子「うーん…。いつの間にかそうなっていたって感じなので、想像していたかといえばしていないかもしれないですね」
−−引退が頭によぎることは?
日菜子「なかったです。オリンピックと世界選手権で1つずつメダル獲りましたけど、それで満足して『もうやめていいや』って思ったことないし、結婚しても、子どもを2人産んでも引き際をどうすればいいかを考えたことはないです。目標設定はしていますけど、オリンピックまでの4年とか、長いスパンでは考えていません。短いスパンで目標を立てて、それをクリアすることの繰り返しが二十何年続いているので、いつの間にか40歳になったって感じです」
−−妊娠を隠して大会に出たこともあった
日菜子「結果的にはそうなりましたけどね。最初の子は2005年の世界選手権の後、2人目の子は07年の日本社会人の後に妊娠がわかったんです。安定期でないのにまともにトレーニングしてまともに大会に出ていたので、終わってみるとあり得ないというか、大変なことをしたなって思いますね。特に初産は世界選手権の後ですから。大会中に何となくつわりみたいな症状があったんですけど、自分の出番の前の日に症状が止まって普通にレースをやって、帰国して行きつけの産婦人科に行ったら『妊娠ですね』って」
−−結婚する前と後で変わったことは?
日菜子「結婚する前はとにかく自分のために泳いでいるという意識が強かったです。結果は二の次で自分が満足できるかどうかが大事だった。でも、結婚してからはまず、家のことを率先してやってくれる旦那(毅郎=たけお=さん。水泳業界とは関わりがない同い年の会社員だったが、長女出産後は所属クラブで日菜子のマネジメントをしている)に恥をかかせてはいけないって思いが強くなりました。旦那が頑張っているんだから当然私も頑張らないとって。それから、子どもが生まれてからは、子どもが少しでも興味を持てるように頑張ろうって。モチベーションは変わってきているかなと思いますよ」
−−娘2人(長女結菜=ゆな=12歳、次女香菜10歳)もスイマーとしてそれぞれの年代でトップクラスになった
日菜子「さっきもいいましたけど、まず2人とも興味を持てたことがうれしいです。でも、ここまでのレベルになるとは思っていなかったので困ったな…と」
−−困った?
日菜子「下の子(香菜)はスタイルワンが平泳ぎだし年齢が10歳なのであと3年くらい時間はありますけど、上の子(結菜)はスタイルワンが私と同じ自由形の短距離で中学に上がる来年辺りから日本選手権に出てきそうな勢いですからね。つまり、ライバルが1人新しく出てきたんですよ。つい最近までライバルが誰かって意識することはまるでありませんでした。大学の頃、記者の人たちは『市原(さな=同年代の自由形エース。200m自由形で日本記録を保持していた)さんのことをどう思いますか?』って、大会が来るごとに質問していたけど、女優さんじゃないけど、『別に…』としか思っていなくて。見習いたいと思うところはいろいろあったし、どうしてこんなことができるのかなと気になるところもあったけど、ライバルとは思っていませんでした。でも、上の子がメキメキと力をつけてくると、『負けられないな』って気持ちになるんですよね。火をつけたといえばいいですかね」
−−全日本選抜で対戦した川口や松村奈央はどんな存在?
日菜子「なんだかんだ言って気になる存在ですよ。泳ぎの映像を見て『どうしてこんなに泳げるのかな』って見て研究するし、お互いに気になるポイントを話し合うこともします。川口さんとはあまり直接的な交流はないですけど、サブプールとかで何か聞かれたらアドバイスすることあります。奈央は大学の後輩ですから結構交流がありますね。他のOB・OGと大会へ応援にいくこともあったし、大学を卒業した後は同じクラブになったのでお互い練習でアドバイスし合うし、娘の指導や面倒も見てくれてますよ。あと、奈央はモデルですから雑誌の取材を受けたときの写真写りについてのアドバイスももらっています。全日本選抜の検量の時の立ち方、歩き方も奈央に教わったことを参考にしました」