「浮気編」-9
そして、月日は流れた。妻は無事に女の子を出産し、私たちは三人での新しい暮らしが始まった。
妻はあれから、どの男とも連絡を取り合っていないようだ。妻の寝室には盗聴器を仕掛けてあるし、一度、興信所に頼んで、昼間の妻の素行を調査してもらったこともあるが、浮気をしているような様子は見つからなかった。
娘はもうすぐ一歳になるが、私はまだ妻を抱いていない。妻の実家で抱いて以降なので、おそらく二年ほど妻を抱いていないことになる。
妻自身も、西口と別れてから、少なくとも一年以上はセックスをしていないはずだ。私は妻の寝室をたまに盗聴しているので知ったのだが、娘を産んで半年ほど経ったころから、妻は昼間に自慰行為で慰めていた。
私のほうはというと、夜中、自分の部屋でヘッドホンをして、西口が撮りためていた妻が他人と交わる映像で射精するのが日課となっていた。
夫婦という関係で、しかも同じ家に住んでいるにもかかわらず、お互いに自分で慰める日々が続いていた。
そんな時だった。ある晩、娘が寝静まったあとのリビングで、妻から相談を受けたのだ。妻は、相当言い出しにくそうな顔をしていた。
私が「何でも気にせず言っていいよ」と妻に声をかけたのだが、妻は「やっぱり、やめておきます」と言ってしまった。私には心当たりがなかった。
そういえば、最近は妻の寝室を盗聴することもしていなかったので、もしかすると知らないうちに浮気していたのだろうか、との不安が頭をよぎる。
リビングのテーブルに向かい合ったまま、しばらく平行線の会話が続いたが、ようやく妻が内容を話し始めてくれた。
それは普通の旦那さんだったら、妻からそんなことを聞けば驚くというか、普通は怒るだろう。しかし、私は違っていた。
私は「怒らないから、もっと話を詳しく聞かせて欲しい」と妻にできるだけ優しい口調で言った。妻は「あなたが少しでも嫌な気持ちになるなら、すぐに断るから」と言って、詳しく話してくれた。
話の内容は、まず、例の鈴木社長(もちろん、妻は私が映像で鈴木社長を知っているとは思っていない)が、妻に電話をしてきたらしいのだ。「息子のことで相談に乗ってくれないか」と。
妻はこの時点で、鈴木社長とは昔の知り合い、と私に告げていた。それから私たち夫婦は一時間ほど話し合った。
そして、翌日の土曜日。約束した時間に、あの鈴木社長が我が家を訪ねてきたのである。
我が家へ来訪したのは、鈴木社長と加代子夫人、そして息子の健介も一緒だった。
社長一人かと思っていた私は少し驚いたが、ここで健介という息子と会うことができたのは良かったと思う。私の心は、すでに決まっていたのだが、この健介という若者はとても好印象だった。
社長と夫人からの懇願はこうだった。健介は童貞ではないが、とにかく早漏で悩んでいるらしく、これから彼女を作る勇気も出ないとのことだ。
だから、もしできれば、健介の早漏が治るまで、友紀にセックスパートナーになってもらえないだろうか、と。
何故、健介のパートナーとして友紀が選ばれたかというと、友紀が社長宅に行った際、妻を見かけた健介が一目惚れしたらしい。
今回の件は、健介自身が父親である鈴木社長に相談したことから始まったそうだ。
普通に考えるなら、とんでもないお願いをされているのだと思う。だが、私は少し悩んだ様子を見せたあとに「分かりました」と答えた。
昨日の夜、妻から話を聞いた時点で答えは決まっていたのだが、少しは悩んだ様子を見せないと向こうも変に思うだろう。
それから、私たちは時間をかけて、色々と条件を提案し合いながら、これからのことを話し合った。それをまとめるとこのようになる。
・健介は、最長三ヶ月のあいだ、この家の二階の一室に住むことになり、通っている大学へはこの家から通う。
・友紀とセックスをするのは、夜のみ。昼間はしないこと。行為は、遅くとも深夜十二時までには終わること(お互い次の日の生活に影響しないため)。
・友紀は避妊薬を常用し、健介とのセックスに避妊具は着けないこと(早漏解消のため)。
つまり、私の妻は毎夜、若い健介の精液を体内の深いところで受け止めることになる。私はそれを想像しただけで、身震いしてしまった。
また、今回の生活費として謝礼もくれることになった。それは、謝礼としては多すぎるほどの、驚きの金額だった。
こうして、奇妙な生活が始まろうとしていた。二階の部屋は三つあるが、私の寝室、妻と娘の寝室、そして健介の寝室となった。
二人の行為が行われる部屋は、健介の部屋であり、そこから離れている私の部屋にまで音が聞こえてくることはなさそうだった。
しかし、すでに健介のベッド下に仕掛けてある盗聴器があるので、二人の会話だけは知ることができる。隠しカメラを設置することもできたが、バレてしまうのが怖くなり、盗聴器だけにした。
その日は土曜日だった。健介のわずかながらの荷物も運び終わり、歓迎の夕食と入浴を済ませ、いよいよ就寝の時が近づいていた。
初日ではあるが、おそらく今夜から二人のセックスが始まるのだろうと予想する。先ほど、風呂上がりの健介の体を見たが、とても鍛えられた若々しい肉体だった。
健介は、顔はそれほどイケメンということもないが、身長は百八十六センチと私よりもずっと高身長で、子供の頃から空手を習っているということだった。
今が夜の十時前なので、約束の十二時までは、まだ二時間ほどある。もし健介が本当に早漏なら、時間は二時間でも十分だろう。
娘はすでに妻の寝室で就寝している。妻は私に「こんなことになって、ごめんなさい」と謝っていたが、私は「大丈夫だから」と妻に答えた。
そして、自室に入った私は、ヘッドホンをして、健介の部屋から聞こえてくる音に神経を集中させた。