冷却 〜アデール〜-4
王がアデールを腕に抱えて出てきたのは、すっかり辺りが暗くなり、星が瞬きはじめるころだった。
「済んだ」
短く告げ、私の腕に女を預ける。
「カティアもだが、よく労わってやれ。子供が育つまでの保護も忘れるな。
いつも言っていることだから大丈夫だとは思うが」
「もちろんです」
律儀に言うところがこの王の美徳だ。
何もかも終わると、王はいつもの冷静で聡明な眼差しに戻る。
「この1日で滞った仕事は」
「隣国の大使との条約締結を1日伸ばしています。すでに我が国に入られていたので、部屋を用意して延泊していただきました。
案文お目通しください。
あとは陳情1件を代理で、決裁書類は机上にございます」
「わかった」
そう言って背を向ける。
もう、王の中に今回相手にした女の記憶はない。
そして、今の王は、見てとれるほどの覇気に満ちている。
きっと明日、庭園の花がいっせいに咲くだろう。
王の精気をお裾分けされたように。
その花の実は、万能薬として国庫に納められ、国民と他国へ流通する。
龍の血を受けた陛下がよくこの国を治めているのも、この特権的な力に依るものも大きい。
このような夜が許されるのもまた、然り。
アデール嬢を医者の手に渡し、城の一画へ向かう。
龍の血を鎮めた女とその子供の居住区。
産まれてくる子供は、普通よりちょっと強靭な体を備えるくらいの、ごく当たり前の人間である。
しかし、今1番幼い子がまだ5歳。これからどうなっていくかはわからない。
親子には、国が監視できる場所にいてもらわねばならないのだ。
広間へ入ってすぐ、王の最初の相手であり、今は女官をかねているサーシャが近寄ってくる。
「終わったのね?」
「ええ」
「部屋の準備はできているわ。でも、その前に…」
サーシャは潤んだ眼で私を見つめる。
「仕方ないですね…」
口角を上げて、私は応える。
「アンッ、あ、そこ、いいの、アアンッ!」
私の上で腰を振るサーシャの胸を、遠慮なく弄ぶ。
すでに何度か達しているのに全く疲れる気配も見せず、ぎゅうぎゅうと私を絞り上げてくる。
「あなたもスキモノですね…あと何回だせば満足してくれるんです?」
「や、だってぇ…いじわる、もとはと言えば陛下のせいなのにぃ」
時折、龍の血に当てられたのか、サーシャのような者が出る。
陛下の症状とほぼ同時期に、男が欲しくてどうしようもなくなるらしい。
そのような女は、すでにほうぼうの貴族の屋敷に届けている。
今頃それぞれお楽しみだろう。
「あ、あふ、あ、もう、イッちゃうぅぅ」
蕩けた顔で身体を弓なりにそらした女の中にたっぷりと射精しながら、思う。
龍の血は罪深い。
しかし、その味のなんと甘美なことか。