昂り 〜カティア〜-1
ああ、時が来た。
むくりと体内で頭をもたげた熱に、それを知る。
横で控えていた侍従に、懐の鍵を渡す。
「承りました」
侍従もすでに慣れたものだ。
「猶予はいかほど」
「3日以内に」
「かしこまりました」
静かに侍従が消え、静寂が深まる。
体内にめぐる龍の血は時折、その大きな力の代償を求める。
俺の身体を変え、精神を蝕み、この国の民に恩恵を与えると同時に犠牲を強いている。
「私は最後の龍。
最後に残されてしまうというのがどんな絶望か、あなたにわかる?
…仲間もいない今、あなたを助けるのもいいかもしれないわ。
けれど、私の血とあなたの身体がそう簡単に和合するとは思えない。何が起こるかわからないわよ」
あの龍はそう言った。
仲間が欲しい。
その想いが、俺をこうした。
2日後の夜、侍従がやって来た。
「ご準備ができました」
「わかった」
良かった。
思ったよりも、身体が熱くなるのが早かったのだ。
ドアを開けると簡易な控えの間があり、その先に二つの扉がある。
「今回は」
「左が処女、右はすみませんが違います。17と25。どちらも事情は言い含めています」
「わかった」
右の部屋を開ける。今回は余裕がない。
侍従は頭を下げて見送った。