『朝焼けのフライト』-1
「…まだ怒ってんのかよ。」
「……。」
現在地、アメリカと東京の間の上空。
彼と来た、楽しい楽しい旅行…の飛行機の中。
なのに。
帰りの飛行機に乗っている今、喧嘩の真っ最中。
原因はくだらない事だとは分かっているし、もう少し寛容になるべきだって事も分かってる。
…でも。
私の性格上、それは無理な話で。
隣の座席でため息をつく彼に何も言わないで、寝たフリを始める。
思えば彼とはもう、マンネリなんていう期間をも越した月日を過ごしてきた。
「……。」
「……。」
諦めた彼は、備え付けのイヤホンで何やら聴いているようで。
私は心の中でため息をついた。
もう機内は窓のカバーを全て閉めきり、乗客はみんな眠ってる。
…隣のこいつは、寝なくて平気なんだろうか。
そう思っていると、窓のカバーを上げる音がした。
静かな機内なだけに、余計に響く、その音。
思わず目を開けて、窓際の彼の方を向くと、何故だか笑われた。
「あ、やっぱり起きてた。」
「な…っ、今ので……。」
『今の音で起きたのかも知れないじゃない!』
と、そう言いたかったのに。
私の言葉は途切れた。
窓から見えた空が、綺麗すぎて。
「…これ、朝焼けだよな。」
彼はイヤホンを外して言った。