「早くアナルセックスがしたい」-2
「……ちせ先輩」
営業課と研究職が会うことはあまり無い。あったとしてもそれは上の人達同士で、下っ端の人間が話すことはあまりない。こっちからしたら営業とか専門外すぎるから。
それでも王川君と知り合ってしまったのは仕方ないわけで。一年も経てば情だって湧く。しっかりと彼氏としての役割を担ってしまった王川君は、見た目の王子様ぶりは中身も一緒で、真摯に私の世話をしたがっていた。
帰ろうかと、白衣をロッカーに仕舞い込んで、研究員室を出た時だった。お疲れ様でしたとまばらに聞こえる声を背に顔を上げれば、廊下の壁に背中を預けながら、王川君がそこに立っていた。
少しだけ、しょんぼりとしている。
会社内では話したりしないし、こうやって顔を合わせることだってしないようにしてるのに。珍しいこともあるものだ。遅い時間だとしてもまだまだ残ってる人はいる。誰に見られるか分からない。隠してるわけではないけれど、社内恋愛は意外に面倒だから、嵐山以外には見られたくない。
なんだか元気のない王川君に心配はするけど、今のうちに帰ろう。彼の手首を引っ張って、急いで会社を出る。外はもう暗くなっていて。夜空の真ん中に月が浮かんでいた。
「どうかした?仕事ミスった?」
「…いいえ……違います」
まぁ王川君がミスるわけないか、とは思う。真面目な子だし、別の課だとしても評判は聞いている。
彼の手が、すっと私の指に絡んだ。恋人繋ぎ、彼は意外に人目を気にせずにイチャイチャをしたがる。そこは多分、歳下っぽい所かもしれない。
「…今日、家行っていいですか…?」
王川君のその声に弱いのだ。今日は一人で、今週末に訪れるだろうお尻の穴調教の勉強でもしようかと思っていた所なのに。彼のそんな弱々しい声で甘えられたら、仕方ないと言うしかないじゃないか。
健気とか、絶対に違う。こいつはきっと、こんな甘えたな顔でさえ計算のうちに入れてるのだろう。