嫉妬-4
そう、もはや私はいい歳をして、駄々をこねた子供みたいに意固地になって拗ねていたのだ。
こんなときの私の本音は、『かまって欲しい、甘えたい、強く抱きしめて欲しい』とそれこそ童心を抱えてただ塞いでいるだけなのだが、はたして妻はそれをまんまと見破り、母性豊かでおおらかな大人の女性としてそれを寛大に受け止めてくれるだろうか。
来た……。拗ねて横向きに背中を向けた私に妻が背後から身体を合わせてきた。
うん? 全裸?
天使の羽根のごとく繊細で柔らかいシルキーなネグリジェの感触か、もしくは温もりや安心感を与えてくれるコットン触りなパジャマの感触か、そのどちらかが来るだろうと思い込んでいた私だったが、意に反して来たのは心蕩けさせるかのような熱い素肌の生感触だった。
横向きになった私の背中に背後から身体をすり寄せてきて、隙間なくぴたりと密着した。
やはり全裸だ。乳房がぺしゃりとひしゃげ、乳首がむにゅっと埋没していく様が手に取るように分かる。
次の瞬間、耳朶を熱い吐息とともに舌が這い、それはそのまま熱い囁きへと姿を変えた。
「あなた、ごめんなさいね……私が大好きで大好きで心から愛しているのはあなただけだからね」
と同時に左手が私のパジャマの前をまさぐってきて、中へと入り込む入口を見つけた途端、すかさずブリーフのなかに滑り込んできた。
背中にむぎゅっと押しつけられたたわわな弾むような感触が巧妙に私の心を奪い惑わせていく……。
それまで必死に忘れようと努めていたあの忌まわしい妄想が頭のなかで一気に膨らんでいき、哀しいかな私の意志とは裏腹に、ペニスまでもが一気に膨張した。
そんな私の心を見透かしたかのように妻はとどめのひと言を囁いた。
「あなたのためだったら私……なんだってしてあげる」
立てるまい、と思っても、ゴクリと喉を鳴らす音が、まるでコンサート会場で一人場違いな拍手をしてしまったかのように、無情にも静寂を破ってこだまする。
美香は、下へと擦り下がると、かなり強引な手つきでパジャマごとブリーフを剥ぎ取り、ペニスを剥き出しにして、凄まじい勢いでむしゃぶりついてきた。
ちゅぽちゅぽちゅぽちゅぽっ……。
「うっ……」
じゅるじゅるじゅるちゅぱっ……。
「ふぐっ……」
プライドを持って拒絶しなくてはという思いと、そんなことはもうどうでもいいという思いとが私のなかで激しくぶつかり合った。
しかし敗北してしまうだろうことはすでに分かり切っていた。
くちゅくちゅ……しゅぼしゅぼ……じゅるじゅる……と、美香がペニスをしゃぶる卑猥な音だけが部屋中に響き渡る。
「うぐっ……」
あまりの快感に私は脚をつっぱり、時折全身を痙攣させながら、いつしか激しく妻の口を突き上げていた。そして……。
悟っていた。彼女の前に屈伏し、敗北してしまったことを……。
まあしかたがない。これが歴史というもの、男はいつだって女の前に跪き、女性を崇める存在なのだ。
命を宿し、子孫を誕生させてしまう女性の驚異に比べれば、男など所詮、深夜台所を徘徊しているゴキブリ程度のちっぽけなものでしかない。
美香が今度は、亀頭の部分にねっとりと舌を絡ませてきた。
「ああ〜……」
激流のような快感の波が過ぎ去り、代わって永遠に続いていて欲しいような甘美な心地よさが脳内いっぱいに広がってきた。
私は首を起こし、そこに眼をやった。
美香の卑猥な舌が私の直立したペニスに絡みついていて、私の視線に気づくと、彼女は熱を帯びたような大きな瞳を私に向け、淫乱な娼婦のようににやりとして、雁首を長い舌でぺろりとやった。
くそっこの女、分かってやがる……。
Oh my God!(何てこった!)と嘲り罵りたくなるほどの劣情に駆られた。
そう、妻は何でも知っている。男がどうすれば悦ぶか、男が何を欲しているか。それが天性からなのかそれともあの男に仕込まれたからなのか、それはいまは分からない。いまはまだ……。
と、突如、またしてもあの妄想が私のなかに湧き起こった。
そこにある一物はいつしか私のものではなく、脇田のものになっていた。
美香は、やはりあの男のものを舐めるときも淫乱な娼婦の顔になり、こうやってあの男を悦ばせようとしてきたのだろうか。
そう考えただけで、私のペニスはさらにいきり勃ち、美香の手と口のなかで硬直した鉄の塊のようになっていた。
「すっご〜い……」美香が娼婦の眼で言った。「びんびんよ」
この言葉で、もはや私は男の威厳も人間としての理性もかなぐり捨てた。
美香をうつ伏せに押し倒すと後ろから股の間に割って入り、カチカチに怒張したペニスを一気に膣穴に突き立てた。
「あっ……」美香が驚きの声を上げた。「すっ、凄っ……美香、犯されてるぅ〜……」