怪談話CASE1:高城時音の場合-1
私は高城時音(たかぎときね)。
普通の会社に就職している普通のOL。ただ、周りの人と違う一体験を除いて。
ここから話すのは、私の体験談。
第一叫---『ドアノブ』---
私は仕事が終わり、家でゆっくりビールを飲んでいた。
プルルルル……
急に電話がなる。
「んぁ?もしもし〜?」
「あ、時音?未紀だよ〜。」
未紀。私の親友であり、ライバルとも言える存在。趣味のテニスでは毎回タイブレークまでもつれこむ。
「こんな時間にどうしたのさ?」
もう夜11時だ。街は静まり返り、月の光が幻惑的だ。
「ちょっとさ、気味悪いことが起きてね…。」
何やら神妙な面持ちで話す未紀。
もう夜。こんな話を聞くのは正直嫌だが、相手は親友。しかも困ってるらしいし、ないがしろにするわけにはいかない。
「何々?心配だよ〜」
「あのね…最近さぁ、夜寝て朝起きるとさ、玄関のドアノブが熱いの。なんか…人が一日中握ってたような温度なの。ずっと一日中玄関の前に人が居るっていうのを想像すると…怖くて、怖くて…。」
なんだそれは…。
人がドアノブをずっと握ってるなんて、私も想像するだけでダメ。気味悪いし、そしてなにより現実的なのが。まだ幽霊だとか、火の玉だとかが良かった。
「なにそれ…。ストーカーより怖いよ!!でもなんでずっとドアノブ握ってるんだろ…。キモいよその人。」
「うん…。でもなんでドアノブなんだろ。普通ドアまで来たら無理矢理でも入ろうとするでしょ。まぁ本当に入ってきたら余計嫌だけど、ドアの前にずっと居るほうが気持ち悪いよ…。」
「とりあえずマイナスに考えるのは止めよう?前向きに前向きに♪もしかしたら今は夏だし、ただの暑さなのかもしれないし。」
「うん。そーだよね!!ありがとう。なんか元気出て来たよ!!」
どう致しまして…と、言おうとしたその時。受話器から激しくドアノブを動かす音が聞こえた。
「未紀!!大丈夫!?なんかドアのほうがヤバそうだけど…。」
「あ…あ…怖い!!怖いよ!!助けて時音…。」
「落ち着いて!!まず怖いだろうけど、ドアのロックをかけにいって!!電話を持ったままで良いから。大丈夫。私がいる。」
「う…うん、頑張る…。」
ギシッ、ギシッという未紀の足音が聞こえる。まるでそれを掻き消すようなガチャガチャという音。恐怖は電波を伝ってこちら側にも来る。とにかく自分は、未紀を安心させる。それだけ。いや、それだけしか出来ない。