怪談話CASE1:高城時音の場合-3
ガチャガチャガチャ…
「…え?」
ドアノブの音が急に鳴り止む。良かった、帰ってくれた。
と、思えればどれだけ良かったか。
ギイィィィィ……
「……!!」
ゆっくりとドアが開く。まだ『それ』の姿は見えない。私は精一杯部屋の片隅に逃げる。
ギシッ…ギシッ…
『それ』は、非常にゆっくりと歩く。
そして『それ』は、ついに姿を私の前に現した。
「あ…、あ、あぁ…。」
声がうまく発せない。
『それ』は3Mもあろうかという長身。それ以外は…ダメだ、言葉じゃ上手く表現出来ない。
「やめて…。来ないで!!来ないでえぇぇぇ!!」
私は「それ」にむかってドライヤーやゴミ箱などを投げ付ける。それは無残にも『それ』に当たって落ちる。それでも『それ』は歩みを止めない。むしろ怒ったのかスピードを上げる。小走り状態。
「いや、イヤ、来ないでー!!」
そして『それ』は、握り拳を私にむかって、目一杯振り下ろした。
私の意識は、そこで途絶えた。
翌朝、私は目を覚ます。
「あ、あれ?生きてる…。そ、そうだ!!未紀は!?」
慌てて電話をかける私。
「未紀?大丈夫?」
「う…うん。何だったんだろうアレ…。」
「アレ、私の家にも来たよ…。」
「え…!?」
「とにかく、私も未紀も生きてて良かった…。」
「良かった…ホントに…。」
そう言って私は、受話器の前に泣き崩れた。