ソレが2人のショータイム-3
「じゃあ、恵理子ちゃん、今日は君はこれで帰っていいよ」
沼口は恵理子にだけ、ここで終わりにして帰るように言った。
「あの、ゆかりちゃんは……」
恵理子は戸惑った。彼女自身は帰っていいと言われても、裸にされたままのゆかりを置いていっていいものかどうか気になったのだ。この後、沼口はひとり残されたゆかりにどんな恥ずかしいことをさせるか知れたものではない。彼女が残ったところで何の助けにもならないことは承知しつつも、このまま自分だけ恥辱の場を後にすることは、親友を見捨てるようで気が引けた。
「いいから、君は帰るんだ。あとはあの子だけでいい」
沼口の言い方は、凄むような調子だった。恵理子をここから追い出したいと言わんばかりだった。
「でも……」
「恵理子、あたしは大丈夫だから、帰れって言われたなら気にしないで。これで恵理子は解放されるんでしょ?」
ゆかりは彼女に微笑みかけて、促す。だがまだ躊躇わずにはおれない。
「なあ、言うことを聞かなきゃ、わかるか?」
沼口はさらに強い調子で迫った。下手に逆らったと思われると、また恐ろしい。「はい……」と恵理子はようやく頷いた。脱いだ衣服を拾い、身に着けた。
「ごめんね、ゆかりちゃん。私だけ……」
見送るように笑顔を向けるゆかりのことがなお気になり、後ろ髪を引かれる思いではあったが、こうして恵理子はギャラリー・ユピテルを出た。
ゆかりのことが気になり、しばし建物の外で立ち止まっていた。だが外からは内部の様子はわからないし、しばらく待ってもゆかりは出てこない。もう一度中に入るわけにもいかず、罪悪感と己の無力をかみしめつつも、恵理子は建物に背を向けて帰路についた。
親友を恥辱に巻き込んでしまった罪悪感が、ずっと頭を離れなかった。