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美少女 羞恥徹底
【学園物 官能小説】

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卒業式とスライドショーと次なる求め-1

 ついに、恵理子の中学生としての最後の日がやってきた。
学年首席の成績で卒業する恵理子は、総代として答辞を読む。仕事の忙しさゆえ、なんとか午前中だけ休みをとって式に出席した彼女の母親は、15歳の春を迎えた娘の晴れ姿を涙ぐんで見つめていた。

 だが答辞を読み上げながらも、恵理子のまだふくらみきらない胸には、いままさに終えようとしている中学生活に対する、明暗さまざまの思い出が去来していた。

 この瀬山中学を卒業したからといって、沼口の支配から卒業できるわけではないことを思うと、それは希望に満ちた旅立ちの日としては受け止められなかった。その悲しみから涙が零れたが、傍から見れば、それは卒業式ならではの感動と別れの寂しさゆえの涙と、区別はつかなかったことだろう。

 卒業証書を手にし、式を終えて出た外で、美術部の後輩たちが声をかけてきた。
「長橋先輩、ご卒業おめでとうございます!」
 恵理子は後輩部員たちから贈られた花束を、卒業証書の筒とともに胸に抱いた。「先輩の入賞、私たちにも励みになりました」などと言葉をかけてくれる後輩部員もいる。けれども入賞にいたった経緯、その絵を描いていたのと同じ頃に、別で描いていたものまで思い出されてしまう。
「ありがとう。これからの美術部、お願いね」

 あの時に強制的に描かされた自身の裸像。そのイメージに苛まれるのを懸命に抑えつつ、どうにか笑顔を作って後輩たちに別れを告げる。それから間もなくして、後ろから男の子が呼ぶ声があった。
「あ、長橋」
 かつての想い人、村上久之だった。

「最後ぐらい、ひと声かけさせてくれ。やっぱり君は、俺の青春の思い出の人だから」
 彼から声をかけられるのは、あの日以来のことだ。同じクラスだったのに、挨拶を交わすぐらいのことはあっても、事務的な用件すらなかったから、あれ以後1年近く一度も話したことはなかった。

「あの時は、ごめんなさい……」
 恵理子は思わず目をそらしてしまう。沼口の罠に落ちさえしなければ、今頃は彼と連れ立ってこの中学校を後にすることができただろうに。そして彼も進む南城高校でも一緒になれただろうに。そんな、あるべきだった世界の光景が浮かんできて、悔しさと悲しみがいよいよこみあげてくる。

「一枚だけ、写真を撮らせてくれないか? これで最後だから、思い出にしたい」
 村上はスマホを出して頼んだ。
「ええ」
 恵理子は頷いた。村上もさすがにツーショットは遠慮したようで、撮ったのは彼女だけの写真だ。恵理子だって、本当ならツーショットで撮りたかった。
「やっぱり、長橋ってほんと美人だな。高校生になったらもっと綺麗になるんだろうな」
 こうして、村上にとっては彼女はただ初恋が実らなかった美少女として、思い出の中で昇華されていくのだろう。

「じゃあ元気でな、長橋」
「さよなら、村上くん」
 恵理子の目からは涙も零れたが、村上からすれば、それはいろいろな別れの日である今日ゆえの涙に映ったことだろう。あの告白を断らなければならなかった彼女の事情を、彼は知る由もないのだ。

「また会おうね」
「元気でね、恵理子ちゃん」
 それぞれ別の道へと歩み出す友人たちとも、別れを告げていく。恵理子には彼女らとこの学校で共にしたのとは別の、忌まわしい思い出が学校の外にたくさんある。彼女らと離れ離れになることは、生活の大切だった方の半分を失う気がして、心細い気も感じさせる。同期で黎星に行く子は他にもいるとは聞いているが、親しかった友達のなかには誰もいないのだ。

 そして最後に、親友のゆかりとのひとときだ。
「恵理子が急に志望校を変えちゃったから、同じ高校に行けなくて寂しいけど、学校が違ってもずっと親友でいようね」
「もちろんよ、ゆかりちゃん」
 本当は中学時代最後の日、ゆかりとはもっと一緒に過ごしたかったが、この後沼口からの呼び出しがかかっている。適当に言い繕って、恵理子はその場を後にした。


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