卒・業・撮・影-3
「ちょっと待ってろ。いいものを見せてやる」
そう言って、沼口はパソコンなどの機材をカチャカチャと操作しはじめた。隣にはプロジェクタもある。
今まで気がつかなかったが、部屋の向こう側に大型のスクリーンが立てられていた。照明が落とされ、プロジェクタが眩しく光を放つと、その上に映写されるものがあった。沼口が機材を操作すると、くっきりと像が結ばれていった。それを見て恵理子は悲鳴をあげる。
「いやぁっ!」
それはほぼ等身大の、2つの彼女の裸像だった。これまでさんざん沼口の前で裸にされてきたし、今も一糸まとわぬ姿のままだとはいえ、こんなふうに大写しにされて自身に見せつけられるのは初めてだった。もし他の誰かに見られたら、恵理子はあまりの恥ずかしさで炎上死してしまいそうだ。
「この1年半で、どれぐらい大人になったかな」
左は、去年の秋の忌まわしいあの日、沼口に初めて撮られたものだった。陰部に黒い翳りがあるから、それだけでもわかる。右は、ふいだ制服を傍らに、さっき撮られたばかりのものだった。14歳と15歳、時期の異なる美少女中学生の2つのヌードを、沼口は交互に見比べた。
恵理子自身も気になって、つい目をやってしまう。
沼口から切るなと言いつけられていたから、髪はセミロングから完全にロングといえるほどまで伸びて、もう乳房の下まで届いている。だがそれに加えて、1年半という歳月は、思春期のからだを確実に変えていた。恵理子自身でもそこまで気づいていないほどに。裸身で比較してみるからこそよくわかるというものだ。
「大人に近づくからだ。保健体育の教科書みたいだな」
沼口が冷やかすように言う。
身長が高くなっているのはもちろんだが、今も決して大きいほうではないとはいえ、胸のふくらみも確かに豊かになっている。ウェストの曲線もより丸みを加え、くびれもはっきりしてきている。まだまだ華奢な少女体型そのものだとはいえ、女性らしく成長しているのは明らかだった。透き通るような肌の白さだけは全く変わっておらず、ただ眩しい。
とはいえわざとなのか、過去の写真は除毛前のものを使ったから、恥部だけは大人への成長が巻き戻されているように見えるのが何とも言い難かった。恥毛がないからよくわかるが、恵理子の秘裂は今もぴったりと綴じ合わさっており、無垢の乙女らしい佇まいを崩していない。
沼口はレーザーポインタを使って画像の恵理子のからだの各部位を指し、そうした違いについて事細かなコメントを加えまでした。恵理子にしてみれば、直接からだを触られているわけではないのに、全身を弄ばれているような気がしてならない。ポインタが指す部分が、震えわななくのを抑えられなかった。自身もいま裸のままだからなおさらだ。つつくように乳首やワレメを指されると、彼女は思わず、自身のそこを手でガードしてしまったぐらいだ。
「これぐらいで成長が止まってもいいのかもな」
沼口の言葉が出ると、恵理子は一瞬怯えた。もしかして、今日こそからだを求められるのかと気になったのだ。高校に入ってしばらくは待ってくれる。あれは嘘だったのか。私の純潔も中学で終わりなのか……、と。
身をすくませ、思わず手で胸と局部を隠すようにする恵理子に、何を思ったか察したように沼口は言う。
「安心しろ。君の少女時代はまだ終わりじゃない。高校に入ってどう変わるのかも、これまた楽しみだしな」
運命の日は先延ばしにされたようで、とりあえず少女は気を休めた。沼口は仕上げとばかりに、これから毎日着ることになる黎星女学院のセーラー服を着させ、前祝いとばかりに撮影すると、この日はそれで終わりになった。