卒・業・撮・影-2
そして合格が決まった週の土曜日に、また沼口から呼び出しがかかっていた。
「改めて、黎星合格、おめでとう」
恵理子には決して喜べない祝いの言葉をまたかけられる。あくまで敷かれたレールを外れなかったというだけの話なのだ。
今日は休みの日なのに、制服で来るようにあらかじめ指示されていた。前にも同じようなことを言われたのを思い出す。家を出るとき、それらしい学校の用事もないのにどうして制服で出かけるのか親からは訝られたが、間もなく卒業だからこの制服をもう少しでも着ておきたいと、どうにか言い繕った。
「もうすぐ、君も中学生ではいられなくなる。その制服も見納めだと思うと、名残惜しいよ」
深緑のブレザーに臙脂色のリボン。その2つの色のチェックのプリーツスカート。瀬山中の制服に包まれた恵理子の全身を見渡すと、改めてこの制服がどれだけ彼女の可憐さを引き立たせていたかを沼口は実感した。そして今日すべきことを言い渡す。
「今日は、卒業記念撮影っていうことにしたいね」
そういうわけで恵理子は制服のまま、いろんな格好をさせられた。
普通に可愛らしいポーズから、上半身、あるいは下半身だけ下着の姿。制服を一部でも身に着けていることで、少女であることが、瀬山中学の生徒であることが強調される。それが沼口の意図に他ならず、もうすぐ卒業だからこそ、見納めの撮影に相応しいものというわけだ。
「じゃあ、スカート、履いてね」
下半身はパンティだけの恰好からそう言われて、恵理子はいったん恥ずかしさから解放される。だがそれは次の辱めの前座に過ぎない。
そのままパンティを脱いでスカートをめくりあげ、すっぽんぽんの下半身を晒すよう命じられたからだ。
服を着ていながらも、その服がいちばん大事なところを守る役目を果たしていない。それはある意味で裸よりも恥ずかしい恰好だった。ファインダーを通して秘裂に集中する沼口の視線に、少女はただ耐え忍ぶしかなかった。
だが見る側からすれば、それは蠱惑的な姿態にほかならなかった。あられもない姿なのに、露わになった無毛のワレメの愛らしさと、恵理子自身の清楚さと恥じらい、そして少女らしさを引き立たせる制服とが合わさると、不思議と淫らな感じがしない。ただひたすら可憐に映るのだ。
「いやいや、卒業記念に相応しいショットになったよ」
それをカメラに収めた沼口も、すっかり満悦の様子だった。そのうえで仕上げとばかり、当然のように裸になることも迫った。
「卒業して制服を脱ぐ……って、意味が違うかな」
そんな笑えないジョークまで聞かされながら、恵理子は上下の制服を外すことを強いられる。その前の撮影では下着は上下とも脱いでいたから、それだけですぐに全裸になるのだ。
「あ、制服はすぐ傍に置いておけ、な」
沼口はそう命じた。ただ裸を撮るのではなく、あくまで「制服を脱いで裸になった」ことを表現したい。そうやって少女のヌードであることを演出したい。そういう沼口のこだわりらしかった。
それは絵画で言う「アトリビュート」の原理を応用したものだ。沼口はそういう教養を持ち合わせている男でもあった。画廊を営んでいるのだから、当然とも言えよう。ひょっとすると美術部員の恵理子ならもう西洋絵画の見方として知っていたかもしれないが、この状況で結びつけて理解することまではできないだろう。
こうして、脱いだ制服を横にした美少女の裸身を、沼口はまじまじと眺めた。
くまなく露わになった白くきめ細かな肌は、照明の光をつややかに反射し、存分に若さを主張している。いまだ控えめな乳房や華奢なからだの線が醸し出す少女らしさは、傍らに置かれた制服がいよいよ際立たせていた。除毛を強要されていなければ年齢的に叢はかなり生え揃っていてもおかしくないが、沼口からすれば少女美はパイパンなくしては考えられない。それこそが自然で、あるべき姿という認識だった。
「今度は、制服を手に持ってくれるか」
続いて沼口は言いつけた。左手に上衣を。右手にプリーツスカートを持たせ、胸や局部が隠れないように細かく指示を出すまでした。
そうして一通りの撮影に満足してから、沼口は恵理子の裸体に向けてつかつかと歩み寄ってくる。指先で彼女の秘貝を広げ、性器を覗き込むと、純潔の証を確かめた。今まで、もう何度こうやって見られたかわからない。何度検査されようが、恥ずかしさは薄らぐこともない。
「ちゃんといままで処女を守ってくれたな、いい子だ」
子供を褒めるように頭を撫でられた。恵理子からすれば何も嬉しくもない褒められ方だ。