17才の花嫁(第1章)-1
智花(ともか)は浴室でゆたかな胸に指を這わせた。悲しみはとめどもなく押し寄せて、耐え切れぬ想いから胸を揉みしだいた。
(ああ、お母さん、どうして逝ってしまったの)
母の千絵は突然、心筋梗塞で倒れ、三日後に43年間の短い生涯を閉じた。
母の死後一週間が経過していた。葬儀に、父は現れなかった。五年前に母と離婚して、商事会社のニューヨーク支社に勤務していた。母が亡くなったことを電話連絡すると、しばし重苦しい沈黙が流れたが、やがて「仕事が立て込んでいるので、葬儀に参列できないんだ」とすまなさそうに言った。智花は心の中にある父の残像が薄れていくのを感じていた。
浴室の中、智花はてのひらで乳房を包み、激しく揉んだ。誰かの胸で思い切り泣きたい。悲しみを癒されたい。それが叶わないのなら、自らのからだを愛撫して孤独に耐えようと思った。明日、7月9日で17才になる智花はまだ蕾のままだった。
智花の17回めの誕生日。それは新しい生活がスタートする日。母の妹の嫁いでいる吉田家に世話になることになったのだ。吉田章朗、珠代夫妻は智花を暖かく迎えた。夫妻は共働き。章朗は自動車部品製造会社の課長。珠代はアパレルメーカー「ワカール」総務部の次長を努めていた。引っ越し荷物の整理が終わったあと、珠代は智花を抱きしめながら「これからはうちの子になったつもりでいてね。遠慮なんかしちゃだめだから」柔らかく微笑んだ。そして叔母は、母が叔母に預けた通帳を智花に見せた。「千絵はかなりの額をあなたに残してくれてあるわ。智花ちゃんは、この中から生活費を払ってくれればいいからね」叔母の珠代のまなざしは慈愛に満ちていた。叔父の章朗も智花を引き取ることに反対しなかった。吉田夫妻には子供がひとり。短大を卒業したばかりの朋美は、珠代と同じ会社に勤めていて、インナー(下着)の商品開発をしていた。
智花の新生活は順調にスタートした。高校への通学時間は倍になったが、毎朝5時に起きて、弁当は自分で作るよう努めていた。叔父の章朗も智花にやさしかった。珠代が残業で遅くなるときは、章朗が夕食を作ってくれた。「4勤2休の勤務やから、暇そうに思われてるんや。家事を頼まれることが多い」章朗はそう言って苦笑した。
朋美も、智花を実の妹のように可愛がってくれた。智花が洋服を買いたいとき、二人で出掛けて、朋美にコーディネイトを頼むこともあった。
「女のコっぽいこのブラウスには、あえてカジュアルなボトムスを合わせるといいのよ」
朋美のアドバイスは的確だった。
ある夜、食事が終わってから朋美の部屋に呼ばれた。
「うちの会社の新商品よ」朋美はチャックの付いた小さな袋から下着を取り出した。光沢のあるナイロン?で縫製されたブルマ型ショーツ。
「智花ちゃん、生理ショーツはどんなの持ってるの?」
恥ずかしくなる問いに智花は顔が火照る。「どんなのって、普通の木綿のサニタリーショーツ」朋美は微笑んで新商品を智花に手渡した。「ヒップアップ効果もあるサニタリーショーツよ。穿いてみて」
ショーツを手渡されて、智花はとまどった。(この場で試着しなければいけないのだろうか?)
「今から穿いてみて」
「えっ、でも…」
「女どうしだから、恥ずかしくないでしょう?」
朋美の好意を無にするわけにはいかない。(恥ずかしいわ)背中を向けて、フレアースカートの中に手を入れて、木綿の下着を脱いだ。ポリエステルの生理ショーツに足首を通す。スカートをたくし上げ、生理ショーツを身に着けた。お尻をすっぽりと包み込む感じで、股のところの防水布も秘部をやんわりと守ってくれる感触があった。
「どんな感じ?」
「穿き心地いいです」
「こっちを向いて」
智花が振り向くと、朋美はいたずらっぽい笑みを見せた。ミニフレアーを捲られた。
「智花ちゃん、お尻のサイズは?」
「88です」
生理ショーツを着けたお尻を撫でられる。「ぴったりだわ、いい感じ。ナプキンを付けてから穿くと、もっと良さがわかるからね」
股のあいだを指で探られた。布と擦れあった秘裂から刺激が走り、思わず「ぁっ」と吐息が漏れた。恥ずかしくなったが、朋美は気にしてないようすだった。「今度、生理が来る前に穿いてみて」さわやかな笑みを浮かべた。