彼女に課せられた掟とはなにか-2
「ほら、これを着けろ」
沼口は新品の上下の下着を差し出した。デザインは多少違うとはいえ、切り裂かれ、剥ぎ取られたものと同じ白のシンプルなものだ。こうするつもりで最初から用意していたとしか思えない。それは気遣いと言っていいのだろうか。
恵理子は震える手で身につけた。サイズはほぼぴったりだった。前から彼女の体型も推定していたのかもしれない。
「こっちは記念に頂いておくがな」
沼口は切り刻まれた下着を拾い上げた。恵理子にとっては辱めの象徴のようなものだが、返してと言って返してくれるはずもない。それが処女喪失の記念物にならなかっただけでも、まだましなのかもしれない。
ともかくも制服まで着た恵理子に、沼口はバッグから封筒を取り出して差し出した。
「ほら、これももらっておけ」
何かと思って中身を見ると、1万円札が3枚入っている。これぐらいの金額は、中学生にとっては大金以外の何ものでもない。
「あの、これ……」
受け取っていいものか、恵理子は戸惑う。
「あの時お礼はすると言ったはずだ。それにこれだけ楽しませてもらったんだから、当然だろう」
強制的に辱めを与えておいてお礼とは差し出がましい。売春婦みたいに扱われた……と抗議したくもなりそうだが、恵理子は売春という概念すらまだ知らなかった。
「何なら10万円ぐらい出してやったっていいんだぜ。君にはそれぐらいの価値がある」
さすがにそんな請求をする気にもなれなかった。だいいちそんな大金を貰ったところで、世間知らずの小娘には、使い方もよくわからない。
それでも、もう押し問答も続けたくなかった。ただ事を収めたいという一心で、恵理子は沼口が出した3万円を受け取った。