遠い日の記憶-1
ドォ…ン
ダララララ…
「はぁっ…はぁ…」
ひどく喉が渇いた。
体中の皮膚が熱いと悲鳴をあげている。
今にも倒れてしまいそうだ。
ズキュゥーン
チュインッ
頭に衝撃がきた。
メットに弾が当たったのだろう。
味方のいる穴へと滑り込んで、メットをとる。
これまでの戦いで、もう凸凹だ。
「…何やってんだ、朝霧。早く被んねぇと流れ弾にやられんぞ。」
「…すみません、六堂さん。」
汚れた緑の制服の懐から、六堂さんは黒い物体を取り出した。
ピンッと、ストッパーの外れる音の直後、その物体は空を飛んで、訳のわからない言葉を話す奴らの近くに落下した。
俺たちは、自分の手で素早く両耳を塞ぎ、身を屈めた。
ドォオンッ
…パラ…パラ……
馬鹿でかい爆音。
断末魔。
衝撃で巻き上げられた土が、勢いをなくして大地へと帰ってくる。
…焼ける臭いがした。
「…っはぁッ…はぁ…はぁ…」
今ので何人死んだのだろうか。
どれだけ殺せば、この争いは終わるのだろうか。
…いったいいつまで、俺は人を殺し続けないといけないのだろうか。
「…朝霧…」
「…何ですか?」
「この戦を、どう思う?」
「…どうもこうも、ありませんよ…。」
どうこう思えば、キリがない。
ただ思うことがあるのなら、この争いの終わりと、人殺しの自分への嫌悪感…。
すべては国のため。
愛する者のため。
「村岡が死んだ」
「━…!村岡さんが?!いつですか!?」
「今朝だ。敵の地雷にやられた。…最後の言葉ぁ、交わす暇もなく逝っちまったよ。」
フッと、六堂さんは鼻で笑った。
どこか悲しげな瞳は、何もかもを閉ざすように、ゆっくりと瞼を降ろしていく。
「…最近、人が死んでもなぁんとも思わなくなっちまってよぉ…。村岡が死んだときも、あぁ、ついにコイツも逝ったか、ぐれぇしか思えなかったんだ、実際。」
遠くで爆発音が聞こえる。
鳴り止まない銃声も、今じゃ[日常]として、俺たちの脳にこびりついている。
「…なぁ、朝霧。俺たち、国のために戦ってんだよなぁ…?」
「…はい。」
「そんじゃあ国はよぉ、こんなに国のことを思ってる俺たちに人殺させて、命懸けさせてまで、何を得ようとしてるんだろうなぁ…?」
「……。」