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モデルの舞台裏
【ロリ 官能小説】

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1)シマ・エンタープライズ-1

1)シマ・エンタープライズ

深夜0時過ぎ。やっと今日の仕事は終わった。
疲れはあるけれど、明日からは4連休。なるべく寝貯めをしよう。
でも、そうすると、また娘とはあまり話せないかな。

そう思いながら、シャワーを浴びて部屋を片付けていると、先ほど、お客さんが「捨てておいて」と言っていたチラシが目に入った。街で配られていて、受け取ってしまったそうだ。

子ども向けの劇団、かな?
『芸能界やモデルに興味のある男の子・女の子、楽しく業界体験しませんか?』
『当事務所は、高額な登録料やレッスン料は要りません』
『シマ・エンタープライズ』

いつも娘を1人、ほったらかしでいる事は、気になっている。
特に土日。他の家庭なら家族でお出掛けもするだろうに、自分は1日中、仕事でいない。
明るい暖色系のチラシを見ていると、ここに行けば、1人の休日も少しは楽しく過ごせるんじゃないか、と思えてくる。

でも、おそらく、母親の中には、ほったらかしているという罪悪感を取り除きたい、という気持ちも大きかったのであろう。
かなり簡単な作りのチラシを見て、そんな気になっているのだから。

 ***

翌々日、母親は『シマ・エンタープライズ』に電話を掛けてから訪ねてみた。
電車で数駅、そこから徒歩5分、きれいな新築ビルの5階。想像よりも、ずっと良い感じに思える。

晴天の空が、そう思わせたのかもしれないけれど…

受付のてきぱきとした応対。通された、清潔そうな応接間。
そして、控えめだけど、自信に満ちた説明。
罪悪感から逃れたい母親にとっては、全部、プラス要素に感じた。

「 本当に、登録料とか要らないんですか? 」
「 ええ、もちろんです。 確かに同業者の中には、ろくに活動もしないで、所属タレントさんからレッスン料とかを巻き上げて運営しているところもあるのですが、ウチは、そういうのを払う必要はありません。お仕事をしてもらって、その中からマネジメント料を頂くだけです 」

部長の名刺を渡してくれた男性が、にこやかに、自信たっぷりに話してくれる。

「 ウチの方針ですが、有名になろうとか、そういう人には向いていないんですよ。どっちかというと、脇役とか通行人とか、そういうのが多いですね。その代わり、仕事の依頼は多い方ですよ。『大暴れ将軍』とか『水戸の助さん』とか、そういうのにも出られるんですよ 」

その題名は、芸能界に疎い母親でも知っていた。どちらも国民的ドラマである。
ビルや受付の先入観、部長の物腰、そして有名ドラマ。母親の気持ちは一気に傾いていった。

 ***

「 早紀ちゃん、劇団とか興味ない? 」

久しぶりに、娘と食事をした後に、話をしてみた。
気が付くと、娘の話も聞かずに、一方的に説明して、一方的に勧めていた。
別に、娘を芸能人にしようなんて気持ちは無い。番組に出られたら、少しは家計の足しになるかもしれない、とは思うけれど、でも、そんな事よりも、休日に娘をほったらかしている母親から抜け出したい、という無意識な気持ちの方が大きいのだろう。

「 ね、行ってみようよ 」

あまりに必死な母親の様子に、早紀は断る理由が見つからない。
頷くか頷かないままに、明日の土曜日、一緒に見学する事になっていた。


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