コノ娘はもう掌の内-3
沼口はそんな少女の怯える心情もすっかりお見通しのようだ。これぐらいの恐怖心だけで、この娘を支配するには十分。そう確信してか、いよいよことを始める。
がたがたと身震いし、セミロングの黒髪を揺らす恵理子の脇から手を差し入れて、沼口は制服越しに胸を撫で回してきた。片手でそうしたかと思うと、もう片方の手でお尻を触りはじめた。
「電車の中でこういうことをされた経験って、あるか?」
「あ、ありません……」
たとえあったとしても、男にこんなことを訊かれたら恥ずかしくてイエスとは言えないだろう。けれども電車通学をしていないからか、実際に恵理子はまだ一度も痴漢被害に遭ったことはない。中学生にもなれば電車をひとりで利用する機会はそれなりにあったが、母親のアドバイスを守って、努めて女性専用車両を選ぶようにしていたおかげでもある。
だからこそ、はじめて味わう屈辱でもあった。しかもスカート越しにはとどまらず、沼口はスカートの中に手を入れ、下着の上からお尻ばかりか股間まで触ってきた。
「やめて!!」
おぞましい感触と恥ずかしさに、恵理子は激しく身をもがいた。だがこうなっては、荒々しい男の力の前に、娘ひとりがどうして抗えるというのか。一瞬沼口の足を踏みつけてやろうという衝動が頭をよぎったが、それで怒った沼口に何をされるかと思うと恐ろしく、できなかった。
「痴漢に遭うってこういうことなんだよ、お嬢ちゃん。学校では教わらない社会勉強ってもんだ。まあ俺以外の男には触らせたくもないけどね」
沼口もその気になればこの方法で恵理子を絶頂まで持っていくこともたやすいだろう。けれども、それなりに人目もある電車の中とは違うのだから、ここでわざわざ痴漢の真似事をする意味も必要もなかった。